スピーチ・ステートメント・メディアインタビュー
スティーブン・スミス外務大臣による日本記者クラブにおける講演
2008年2月1日
スピーチ DFAT_20080201
東京
まず、本日この場で話す機会を下さいました日本記者クラブにお礼申し上げます。初めての日本訪問で、この場におりますことを大変嬉しく思います。外務大臣としての今回の初来日は、訪米に続くものです。
まず日本政府の方々と暖かさと友情に満ちた、生産的で有益な会合を持つことができ大変喜んでおります。昨夜は高村外務大臣と会合及び夕食の機会を頂きましたし、今朝は河野洋平衆議院議長、及び日豪議員連盟の皆様との朝食会がありました。その後、自由民主党の谷垣禎一政調会長や町村信孝内閣官房長官、石破茂防衛大臣と会談を行ったほか、福田康夫首相と短時間の会合を行うという光栄にも授かりました。こうした一連の会合は非常に生産的で有益なものでした。
早い時期に日本を訪れたのは、日本が長年オーストラリアにとりこの地域で最も緊密で、かつ一貫した友人であるのを強調したかったためです。両国は多くの価値観と国益を共有しています。両国の関係はこれまでになく強固であるとオーストラリアは捉えていますが、わが国の新政権はこれを更に向上させると誓っています。両国の関係は歴史的に見て経済を基盤としてきましたが、現在でも経済における関係は決定的に重要です。日本は長年にわたりオーストラリアの最大輸出市場であり、今後も長らくそうであり続けるでしょう。これは全般的にもそうですが、とりわけ天然資源や石油資源の輸出に当てはまります。私自身西オーストラリアの出身であるため、鉄鉱石であれ液化天然ガスであれ、天然資源や石油の対日輸出の重要性については深く理解しています。同様に重要なのが、日豪両国間の投資です。日豪の経済関係は今後も極めて重要であり、両国が現在の自由貿易協定(FTA)交渉を生産的に進めたいと考えているのは、その将来を語る上で最もふさわしい点です。もっともこの呼び方ではなく、日本では経済連携協定(EPA)と呼ばれているようです。日豪は共に、EPAはお互いの国益にかなうという見方で一致しています。この協定が効果的であるための課題や話し合いは絶えず存在し、現在もこの面での努力が行われていますが、オーストラリア政府はこうした努力は継続されるべきであると考えており、またこれが最終的に生産的な結果に結びつくよう望んでいます。より最近では、日本との経済における関係は、重要な安全保障や戦略分野へも広がっています。オーストラリアは現在日本との関係を、経済、戦略、安全保障面での重要なパートナーシップと捉えるに至っています。この戦略、安全保障面での取り決めや関係、あるいはその拡大という点で、両国間には安全保障協力における日豪共同宣言が存在しています。オーストラリア政府は、この宣言の詳細の実現に力を入れています。また政府は本宣言を土台とする行動計画や、重要なことに、両国の防衛・外務大臣による日豪外務・防衛閣僚協議を通じて、本宣言を実現しようとしています。次回の協議はオーストラリアで年内開催が予定されており、今年下半期になると思われるその正式な日程が決まるよう望んでいます。
両国間で拡大する安全保障や戦略面での関係やパートナーシップにおいて、同様に重要なのが日米豪戦略対話です。私が昨年12月上旬に外務大臣に就任以来真っ先に行ったのが、外務審議官であった藪中三十二氏との会合でした。薮中氏は日米豪戦略対話の事務レベル会合でキャンベラに来ており、ニック・バーンズ米国政務担当国務次官やマイケル・レストレンジ豪州外務貿易省次官との会合を持っていました。したがって薮中氏と話をする機会を得られた訳です。この後私は高村雅彦外務大臣と電話で会談し、これが早い時期の訪日につながりました。オーストラリアと米国は同盟関係にあります。日本と米国も同様です。さらにオーストラリアと日本は安全保障、戦略面で大変重要なパートナーシップを築いています。この三か国関係の枠組みの追求は、日豪の戦略、安全保障面での国益に大変重要です。日本が長期にわたり地域協力や地域支援を提供してくれた点を、我々は大変評価しています。新政府は発足にあたり、その外交政策として3つの重要な柱、基本を述べています。ひとつが米国との同盟関係、二つ目が国連におけるオーストラリアの役割強化と外交協議における多国間主義の重視、三つ目がアジア太平洋地域への関与です。
先ほど日本記者クラブの来客名簿に記帳した際に、労働党出身であるポール・キーティング元首相の署名があるのに気づきました。私は以前、彼のスタッフとして働いた経験があります。このホーク・キーティング政権が、オーストラリアのアジア太平洋地域への関与政策を始めたと理解しています。この関与を大きく助け、支えてきたのが日本でした。オーストラリアが地域機構の一員、もしくはオブザーバーとなるのを日本が支援してきた事実は大変重要であり、オーストラリアはこの点に長らく感謝してきました。アジア太平洋経済協力(APEC)や東アジア・サミットのような地域フォーラムは、大変重要な地域組織といえます。
国連や多国間主義に対する我々の見方は前で触れましたが、日本政府には私が米国とニューヨークを訪れた際に国連副事務総長と行った会談の中身を伝えました。オーストラリアは国連及び安全保障理事会の改革を強く支持し、日本は改革された同理事会において常任理事国となるべきであるというものです。我々はこれまでも時に、日本が同理事会の非常任理事国になるのを支持してきました。
先ほど申し上げたとおり、日本の閣僚の皆様や首相と短い時間でしたがお会いし、生産的で有益かつ十分な対話を行った際に、これらすべての話題を取り上げました。そしてこれは、経済、安全保障、戦略面にまたがる両国間の重要かつ長期にわたるパートナーシップを反映しています。
しかしどのような関係であっても、国家が意見の相違を認める問題は存在します。現在において捕鯨問題がそうです。オーストラリアは日本は南極海での捕鯨を止めるべきだと強く思っています。この点は高村大臣に電話で個人的に、また昨夜の会談でも指摘しましたし、内閣官房長官にも、ごく簡単にですが福田首相にも伝えました。我々は日本の捕鯨中止を強く望んでいますが、これは無論日本の見解とは異なります。この問題に関し、日本での会談でもいくつかの重要な点がありました。第一に、私と高村大臣は共に、両国はこの問題で対話を継続すべきであり、両国間には強力なパートナーシップが存在するからこそ日豪はこの問題で強く対立していられると強く信じています。この問題で大きな見解の相違はあるものの、それが我々の日本とのパートナーシップの根幹に悪影響を及ぼす可能性はないし、またそうはならないと捉えています。高村外務大臣には、我々はいくつかの点を検討していると伝えました。ひとつには、日本は捕鯨を止めるべきであるというオーストラリア政府、そしてオーストラリア国民の考えを訴えるため我々が特使の任命を検討している点です。もうひとつは、我々がこの問題を国際法廷に持ち込む可能性を慎重に検討している点です。これについては高村大臣に対し、オーストラリアはこの特定の問題で大臣との対話を継続すると約束しました。捕鯨問題全体におきましては、両国は確固たる見解ゆえ意見の相違があるのを認めているものの、私はこの問題が長く続いてきた両国の経済や戦略、安全保障面でのパートナーシップにはいかなる影響も及ぼさないと考えています。
最後になりますが、いくつかの点をまとめたものを用意しています。これらの主要点やテーマについて取り上げたかと思います。ご清聴ありがとうございました。ご質問があればお受け致します。どうもありがとうございました。
Q&A
(記者)質問がふたつあります。いずれも捕鯨についての話です。環境保護団体、シーシェパードという団体があります。この団体が日本の調査捕鯨船に乗り込んで妨害活動を行いました。先日クリーン貿易相が日本に来られた時に、日本側は憂慮を伝えてあります。補給のため今オーストラリアに寄港されたそうです。日本側からは法的措置もということを言っているのですが、まずシーシェパードに対してどのような措置を取られるのか、取られないのか。この件がまず一点です。二点目は、オセアニック・バイキング号が、巡視艇が日本の調査捕鯨艇を監視しています。これは国際司法裁判所、国際法廷に提訴する場合の証拠集めということを表明されております。具体的にどのような提訴、どのような時期にどのようなタイミングで行うのかお答えいただければと思います。
(大臣)ご質問ありがとうございました。二番目のご質問にまずはお答えします。オーストラリア政府は、オセアニック・バイキング号に日本の捕鯨活動に関する証拠を収集する監視活動を行うよう指示しました。オーストラリア政府、及びオーストラリア国民は日本の捕鯨活動は科学調査ではないと考えており、この点を国際法廷で訴える場合に裁判で使える可能性があるからです。これは鯨の殺戮です。鯨の非致死的科学調査は現在行われており、その継続に何ら異議はありません。しかし我々にはいわゆる致死的な調査捕鯨と呼ばれるものが、科学的調査であるとは思えません。したがってオセアニック・バイキング号の目的は、そうした証拠を(裁判での)使用の可能性に備え、集めることにあります。冒頭でお伝えしたように、その可能性について我々は慎重に検討を進めており、そうした議論を行いつつ日本政府と対話という形で協議を継続し、我々の議論の進展ぶりや、しかるべき時にはその結論を日本側にお伝えしたいと思います。
シーシェパードやグリーンピースのエスペランザ号については、一般的な見解を述べたいと思います。オーストラリア政府は12月末に、国政政策の目的と日本に捕鯨を中止させるための一連の措置を発表しました。捕鯨船であれ、税関の船であれ、またグリーンピースやシーシェパードなどNGOの船であれ、いかなる船舶であっても自制した活動を行うことが最も重要であるとこの時申し上げました。この海域は大変危険で安全な場所から遠く離れており、被害が出る可能性や危険は高く、救助の可能性は限られています。私の忠告にも関わらず、2名の活動家は捕鯨船に乗りこみました。私が再び呼びかけを行ったのは、乗船という行為が私の要請していた自制的活動であるとは思えなかったためです。2名の乗船があった後すぐに、我々は日本政府に対し、2名が捕鯨船から下船し前にいたシーシェパードの船に戻るのを支援するよう要請しました。日本政府はすぐにこれに同意しましたが、しかし両方の船長から協力を取りつけるのは不可能でした。日本政府はその結果オーストラリア政府に支援を要請し、我々はこれを受け入れ、オセアニック・バイキング号を使って、日本の捕鯨船からオセアニック・バイキング号、さらにはシーシェパード側へと活動家の引渡しが上手く安全な形で行われたのです。これは日本政府の要請を受けてのもので、日本政府はオーストラリアがこうした形で支援したのに大変感謝してくれました。当時申し上げた点ですが、オーストラリア政府は個人の行動には責任を有しません。エスペランザ号あるいはシーシェパードの行為には、我々は責任を有しません。オーストラリア政府はどこから来たかに関わらず、不法な行為を行った者を非難します。我々は違法行為を容赦しません。同様に、公海における人々の安全を脅かす行為を容赦しません。2名の活動家がシーシェパード側に引き渡された日に、船長はこうした事件が再び発生する理由は見当たらないと語りました。そうであってほしいと私自身思います。同時に関係者に対しては行動を自制し、公海で接触があった場合には、海上での安全と個人の安全が最優先されるよう促します。オーストラリア連邦警察が何らかの違法活動があったのかを調査中であると、わが政府は明らかにしています。これはオーストラリアにおける普段の慣行や手続きに従ったものです。オーストラリア連邦警察はこの評価を現在行っており、オーストラリアの適切な慣行に基づき独自の検証を行います。
(記者)環境及びエネルギー問題についてふたつお聞きします。一点目は気候変動枠組条約についてですけれども、オーストラリアは政権交代してから京都議定書を受け入れる方向に方針転換しました。今後次の枠組みをどう決めていくか、これが非常に大きなテーマになっております。オーストラリアとしては国ごとの数量規制を求め、受け入れる方向なのでしょうか、いかがでしょうか。これが一点目。二点目はインドとアメリカの間で原子力協力が進みつつあります。しかしオーストラリアはインドに対してNPT(核不拡散条約)に入っていないという事情から、ウランは輸出しない方針を示されました。今後NSG(原子力供給国グループ)の方でも議論されていく話なのですが、オーストラリアとしてはインドにNPT加盟を強く求めていく考えでしょうか。
(大臣)ありがとうございます。最初の気候変動についてのご質問ですが、私が外務大臣に就任してまず行ったのが、国連気候変動枠組条約締約国会議に参加するオーストラリア代表団への信任状の交付でした。そして現在のオーストラリア政府が発足後間もなく行ったことのひとつが、京都議定書への批准でした。首相に随行してバリ島へ行き、バンキムン国連事務総長に批准書を手渡したのを大変嬉しく思いました。これは、気候変動問題で現状に甘んじてはいられないというオーストラリア政府の見解を反映、強調するものです。我々は大幅な(温室効果ガス排出)削減を視野に入れる必要があります。例えばオーストラリア政府は、2000年レベルから2050年までに60パーセントの排出量削減を約束しました。そしてその半ばで再生エネルギーの割合を20パーセントにするという目標を掲げました。先進国と途上国の両方が排出量の削減を実行する必要があるのは、日本と同様オーストラリアでもよく理解されています。最近日本の首相が、クールアース推進構想を発表されました。排出量削減が行われる中で、オーストラリアは日本と協力を行えるよう楽しみにしています。この問題はもちろん、日本が議長国を務める7月のG8首脳会合の主要議題(のひとつ)です。わが国も、先進国と途上国の両方が排出量の削減を実行する必要があると認識しています。世界に必要な長期的な排出量の削減を実行するために、二国間関係や、域内組織、多国間関係を活用するなど、オーストラリア流に言うなら“車輪に肩を当てて車を押す”、つまりは全力を尽くす必要があります。
原子力エネルギーに関してですが、オーストラリアはウランの輸出国です。しかし現政権は労働党としてかつての野党時代から、オーストラリアは核不拡散条約の締約国以外へのウラン輸出を認めないという政策に長くコミットしています。オーストラリアは、一貫して核不拡散条約を支持してきました。そして現政権は発足時に、オーストラリアは核不拡散や核軍縮でより活発な活動を行うと新たに約束しました。ウランが核不拡散条約の締約国以外に輸出されてはならないという我々の信念は、私が米国と日本に発つ直前に、パースで行ったインド首相特使との会談にも反映されています。米国とインド間の民生用の原子力協定については、このインド首相特使とも、また米政権とも話し合いました。この件でまず言いたいのは、いかなる合意が打ち出されるにせよ、それはインド政府とインドの議会、さらに米国の議会が決定するという点です。米国政府と議会が、そしてインド政府と議会がこの協定を承認して初めて、本協定は国際原子力機関(IAEA)や原子力供給国グループ(NSG)において承認されるべきかという問題になります。オーストラリア政府はこの件を大変慎重に検討しており、もしNSGやIAEAの参加・加盟国としてのオーストラリアの対応を問われた場合に、我々は自らの決定をしかるべき時に明らかにすると、インド及び米国政府には伝えています。しかし承認の問題はあくまで、インド政府や米国政府、そしてインドと米国の議会次第です。
(記者)FTA、EPAについてご質問します。ひとつは、だいたいいつ頃までにこの交渉がまとまったほうが良いか、何かお考えがあったら教えて下さい。二点目は、日本の農家が非常にオーストラリアとのFTAに反対していますが、これについてどのようにお考えであるか教えて下さい。
(大臣)両国間でFTAあるいはEPAを実現させる、あるいはその交渉で合意するというのは、お互いの国益になるとオーストラリアと日本は考えています。私はその合意に至る迄のスケジュールよりも合意の中身により関心があります。すべての分野においてセンシティビティー(影響を受けやすい品目など)や解決されるべき問題は存在しており、FTAあるいはEPAの追求にあたって、日本の農業には一連のセンシティビティーが存在するのは周知のとおりです。したがって実際のスケジュールよりも、中身の充実した協定かどうかへの関心が強いわけです。交渉は現在進行中です。両国政府は交渉が続くよう望んでおり、私は多国間の貿易取り決めに則った、日豪の国益を最良の形で満たす協定が作られるよう楽しみにしています。経済の開放は地域もしくは国際社会全体の利益になるのと同様、最終的にはそれぞれの国に恩恵をもたらすと強く信じています。