スピーチ・ステートメント・メディアインタビュー
「より良き世界構築への協力」
ケビン・ラッド首相 京都大学講演
2008年6月9日
スピーチ DFAT_20080609
私は、昨日日本に着きましたが、すでに二つの大都市を訪問しております。両都市共に歴史的に、そして未来へのメッセージを強く発信しています。
最初に訪れた広島では、記念館 (平和記念資料館) を見学しました。大変意味深い記念館です。それは、戦争の代償はどんな新しい世代の想像をも絶するもので、すべての世代が平和の尊さを新たに考え直すべきであることを思い起こさせます。
そしてここに、日本における偉大な文化と豊かな歴史が根付いている町、京都の美を詠んだ有名な俳句があります。
俳聖芭蕉の句です:
Hearing the cuckoo's cry
I long for Kyoto
京にても京なつかしやほととぎす
この偉大な都市の美しさは、季節の移り変わりにもあります。冬の雪、春の桜、夏の暑さ、そして秋の紅葉の彩りです。そして、この季節の変化が、未来への大きなチャレンジである、気候変動という大きな課題を、我々に連想させてくれます。そして、京都は世界の人々の記憶にとどまっているのです。
今日、私も未来を見つめたいと思います。新しい世紀は、確実に始まっています。そして新世紀最初の10年は、もうほとんど過ぎゆく過程にあるのです。
今や我々は、アジア太平洋地域の将来がどうなるのかを、考え始めなければならない時にきているのです。
本当に平和な世紀になるのでしょうか?
我々は、すべての人々のために繁栄を築き続けられるでしょうか?
我々は、民主的な社会を拡張し続けていけるでしょうか?
我々の地域は持続が可能で、世界に貢献していけるのか、それともそこから脱落していくのでしょうか?
我々は、こうした願いが実現できる地域をめざし、形成していくことを考えなければなりません。何もせず、外圧のなすがままに任せるわけにはいかないでしょう。
この地域や世界において、我々が共有する未来に思いを馳せる時、オーストラリアは日本を真の友人であり、パートナーであると考えています。私達の関係は強く、お互いの友情は不滅です。
その関係は、1957年に両国間で調印された通商条約にさかのぼり、経済協力の強固な基盤の上に築かれています。
我々は、共通する価値観を持っています。そして両国は共に民主主義の大国です。我々は、共にアメリカの同盟国であり、アメリカの過去半世紀以上にわたって保たれてきた、戦略的な安定から恩恵を受けています。
両国は、2国間及び世界を相手にした貿易大国であり、開放された世界貿易の制度からも恩恵を受けています。
オーストラリアと日本は、世界の発展にも深く関わっています。我々は、平和維持活動を含めて、国連を支持しています。
我々は、全世界に開発援助を提供し、そして災害が起これば協力して行動しています。我々は、善良な世界市民として認められていると、私は信じています。
そして、オーストラリアと日本は共に、平和や安全保障、繁栄、開発、持続性などの推進を目指して、我々自身のアジア太平洋地域における地域機構、制度、慣行などの開発に携わっています。
従って、オーストラリアは日本との関係を、包括的な戦略、安全保障及び経済面において重視しています。共通する利害関係の中で協力関係を築いていますが、この関係はまた、共通した価値観や永続する友好関係に基づいた協力関係でもあります。
今日私は、我々が将来直面する課題や、どうすればオーストラリアと日本がそれに対応し、力を合わせて行動できるかについて、お話したいと思います。
核兵器や気候変動、食料・エネルギーの安全保障といった課題と共に、我々の地域における将来的な制度的機構などについてお話させて頂きます。
過去10年間、世界は核兵器に対して適切な関心を示してきませんでした。北朝鮮の核計画とそれがこの地域に及ぼす脅威や、同様に、まだ捨てきっていないイランの核に対する野心など、我々が対決を余儀なくさせられてきた核開発の問題が続いてきました。そして、兵器拡散の脅威に対抗する新しい手段も、いくつか考えられてきました。
オーストラリアと日本は共に、「拡散に対する安全保障構想」(Proliferation Security Initiative: PSI)の共同提案国です。そして、オーストラリアと日本は、原子力供給国グループ(Nuclear Suppliers Group:NSG)の枠組みの中で、輸出規制に関して緊密に協力しています。こうしたことは、核兵器廃絶に対する世界的な努力、特に核不拡散条約 (Nuclear Non-Proliferation Treaty: NPT) の基礎を支える援助になっています。
しかし、冷戦の真只中で我々が経験した時と同じような、核兵器の脅威に対する関心はもうありません。核兵器の蓄積が、1980年代から減ってきたからです。
二つの主要な核大国、我々共通の同盟国であるアメリカとロシアは、核兵器の保有数を削減する一連の条約を交渉してきました。そして、南アフリカとウクライナは、核兵器の保有国がそれを放棄できることを実証しました。もはや二大国間での核戦争を恐れて暮すような必要はなくなりました。
しかし、核兵器は存在しています。新興の諸国家がそれを獲得しようとし続けています。我々の地域を含めて、いくつかの国は現有の戦力を拡大しつつあります。
広島はこうした兵器の恐ろしい力を、我々に思い起こさせてくれます。広島は、核兵器の絶えることのない拡散を阻止するため、警戒を怠ってはならないということを、我々に思い知らせてくれるところです。
そして私達には、究極的に核兵器の存在しない世界を目指す決意が必要です。
世界的な核軍縮努力の基礎になるのは、依然として核不拡散条約です。それは、核兵器が存在するという現実を前提とした条約ですが、最終的な廃絶という確固とした目標があります。それは、どのような歴史的尺度から見ても、特にこの条約が交渉された1960年代の諸国間にあった拡散の圧力が強かった時代から、核兵器の拡散を食い止める力になってきた条約なのです。
しかし、40年後の今日、この条約が行き詰まっています。いくつかの国が、条約の枠外で核兵器を開発してきました。北朝鮮のように、国際社会に逆らって、条約からの完全な離脱を宣言したような国さえあります。その他イランのように、条約が査察権を与えている機関である、国際原子力機関 (IAEA) に抵抗し続けて、条約の内容を無視している国もあります。
国際社会が取りうる行動には、二つの道があります。核不拡散条約を粉々にし続けるか、それとも、条約を復元して擁護する世界的な努力を尽くすかです。
オーストラリアは疑いなく条約を支持します。私は、我々の前途に横たわる困難な任務を、全面的に受け入れます。
私は、日本とオーストラリアが協力して行う活動は、拡散の世界的な討議に対して重要な影響が及ぼせると、確信しています。我々には比類のない資格があります。日本は依然として、核兵器を体験した唯一の国です。今日の日本には、大規模な原子力産業がありますが、オーストラリアには、世界最大のウラン資源があります。
従って我々は、この討議に各国が訴える懸念が理解できるのです。そして、我々は、核不拡散条約の重要性に対して共通した見解を持っています。
また、オーストラリアと日本は共に、両国の国際原子力機関に対する強力な支持などを通じて、拡散に強く反対している国としても認められています。
過去10年以上にわたって毎年、日本は核軍縮に関する決議案を国連に提出してきました。オーストラリアは毎年、その決議案の共同提案国になることを誇りにしています。オーストラリアは、ただそれに賛成票を投じているだけではありません。オーストラリアは、日本と共にそれを国際社会に提案して、共同してその支持を求めているのです。
オーストラリア自身も、過去4分の1世紀にわたって、オーストラリア・グループの設立や、化学兵器禁止条約 (Chemical Weapons Convention: CWC) の原調印国の1つとしての国連での活動、包括的核実験禁止条約 (Comprehensive Nuclear-Test-Ban Treaty: CTBT) での活動などを通じた、軍備管理や軍縮で強力な国際的信用を促進してきました。
さらにオーストラリアと日本は共に、核兵器が及ぼす長期的な課題についても全世界で考えるという最前線に立ってきました。
1990年代にオーストラリアは、核兵器廃絶のためのキャンベラ・コミッションを招集しました。日本は1990年代の末に、「核不拡散・核軍縮に関する東京フォーラム」(Tokyo Forum for Nuclear Non-Proliferation and Disarmament)を創設しました。これら二つの機構は、核兵器に対処する国際社会での基準になった報告を作成しました。
私は、今こそ当時取り上げられた問題を見直して、その時到達した結論を再検討する時であると思います。核不拡散条約の運用検討会議 (NPT Review Conference) が2010年に開催される予定です。この会議は、条約の加盟国が、条約目標への進展状況を審査し、その条項強化の方策を検討するため、5年毎に開いている会議です。
2007年に、アメリカのヘンリー・キッシンジャー元国務長官が述べたように、核の不拡散は今日の世界が当面している最重要な課題です。
そこで、運用検討会議を行う前に、我々は如何にしてこの条約を支持し、どうすれば我々の目標に向かって前進できるかを、少し真剣に考える必要があります。
本日私は、核不拡散と軍縮の国際コミッション (International Commission on Nuclear Non-Proliferation and Disarmament) を創設し、ギャレス・エバンス元オーストラリア外相と共同議長を務めることを発表致します。
このコミッションでは、これまでに我々がどこまで成し遂げ、今後どれほどなすべきことが残っているかを知るために、キャンベラ・コミッションと東京フォーラムのレポートを再検討し、将来に向かって実施できる行動計画を開発するものです。
このコミッションは、オーストラリアが主催して2009年末に開催する、専門家による重要な国際会議において報告を行う予定です。このコミッションの活動のなかで、日本との討議に専門家達が参加するのを期待しています。
またオーストラリアと日本は、この重要な国際討議を推進するため、不拡散と軍縮に関するハイレベルの対話を行うことにも同意しました。
コミッションと今後の会議は、2010年の核不拡散条約の運用検討会議への地固めを進めることを意図しています。我々は、次の運用検討会議で何の進展生み出せなかったり、悪くすれば崩壊させてしまうようなことがあってはなりません。
この条約は非常に重要です。核不拡散の目標達成は極めて重要です。これほどの努力を追加しても、成功する保証はありません。しかしそれでも、あらゆる外交的な努力の遂行を諦めてはなりません。
これは、戦略的な政策に独自の経験をもった人々に共通する見解です。アメリカで、ジョージ・シュルツとヘンリー・キッシンジャーの元国務長官、ウイリアム・ペリー元国防長官、サム・ナン元上院軍事委員会委員長らが、1月にウオールストリート・ジャーナル紙に掲載された重要な記事のなかで、次のように述べています:
「核兵器や核の専門知識、核物質などの加速的な拡散は、我々を核の臨界点に立たせている...こうした脅威を解決するため現在我々がとっている手段は、この危険に対しては適切ではない。」
我々のこうした討議に関連して、著名なアメリカ人のグループは、将来に対する次のような措置を示唆しています。彼らによると、我々がなすべきことは:
- 条約の全加盟国に国際原子力機関が設計した監視設備の採用を要求することで達成できる、核不拡散条約に従った監視手段の強化
- 原子力エネルギーに対する関心が増大している折から、原子燃料の流れを管理する国際的な制度の開発
- 包括的核実験禁止条約に実効を与える手続きの採用
今や新しい取り組みの必要な時です。その際、核不拡散条約の再活性化と国際原子力機関が、重要な役割を持ちます。
国際社会が当面するもう一つの重要なチャレンジは、気候変動です。
10年前の1997年12月に、国際社会がここ京都で会合した時、世界にとって気候変動に対する行動の必要性で、コンセンサスが生まれ、「京都議定書」が採択されました。
そして、オーストラリアの現政権が最初に行ったことは、京都議定書を批准する文書に調印することでした。
気候変動は、現代における最大の道義的、経済的、そして社会的な問題です。
我々は過去の世紀に、高炭素環境のなかで発展し、成長してきました。今や我々には、ギアチェンジが必要です。そして、それを最低限の費用で実行しなければならないのです。
オーストラリアと日本は、この計画を先導できます。
そして、気候変動に関する主要八カ国拡大首脳会合 (G8 Outreach Summit) と、主要経済国会合 (Major Economies Meeting: MEM) の首脳会合に出席するため、福田首相からのお招きを受けて、4週間後に再び日本を訪れることができることを嬉しく思います。
私は、G8会合に至るまでの気候変動に対する、日本政府と福田首相の世界的な指導力への、私の称賛を記録に留めたいと思っています。
我々が今必要とするのは、気候変動問題に対応できる、有効的で国家的そして国際的な行動です。
気候変動に対するオーストラリアの政策は、次の原則に基づいています:
- 排出削減への取り組み
- 適応への取り組み
- 国際的交渉を通じての国際的な行動
そして、我々は、オーストラリアの政策に対する取り組みが気候変動の科学を明確に理解した情報に沿ったものでなければならない、という見解を持っています。
科学的に人間が引き起こす地球の温暖化が明らかになっていますが、我々は継続してその理解を深めて行かなければなりません。我々は、海洋と大気の関係や、我々の炭酸ガス排出がそれらに及ぼす影響など、極めて複雑な気候の仕組みについて、もっと詳しく理解する必要があるのです。
オーストラリアと日本には、気候変動について共同で作業してきた長い歴史があります。事実、それは我々の南極での研究協力の焦点です。南極と南極海 (Southern Ocean) が、地球上の気候体形に大きな役割をもっているからです。
今週末東京で、両国の南極科学者が南極の気候科学での協力を強化するため会合が開かれます。これは気候変動の速度や形態、軌跡などについて、我々の理解を深めるため難題を解くに際しての重要な会合です。
科学者達の活動は、気候変動に対してより多くの行動が必要であることを裏付けるための証拠を提供するものであり、今週末に福田首相にお会いする時には、南極調査に関するオーストラリアと日本との協力推進を提案する予定です。
こうした科学的根拠により、深刻な気候変動の影響を避け、世界経済が負担しなければならない経費の軽減を望むなら、出来るだけ早急に行動しなければならないことは明白です。気候変動に対する無意味な経済的負担は、実際の行動に必要な経済的コストより遥かに大きいのです。
気候変動に対するオーストラリアの最初の柱は、炭酸ガスの排出削減政策です。我々は、森林破壊に対する課題と同じく、環境に優しいクリーンな石炭の利用技術や、代替燃料、再生可能エネルギー、エネルギー効率など、一連の課題と取り組まなければなりません。
重ねて言いますが、オーストラリアと日本は、ここでも密接に協力することができます。日本は、必要とするエネルギー生成の4分の1以上を、石炭に依存しています。そして、この石炭の主な供給元がオーストラリアなのです。そこで我々は、石炭が排出する気候温暖ガスの問題解決に対する関心を分かち合っています。クリーンな石炭の利用技術に、両国は共通の関心を抱いています。
オーストラリアと日本は、クリーンな石炭利用の様々な新技術に投資しています。我々両国は、CO2の回収貯留による世界初の酸素燃焼を実証する、カライドA(Callide A)プロジェクトを支援しています。
さらにオーストラリアは、燃焼後のCO2回収技術を検証するための試験プロジェクトに、中国においても投資しています。
世界でも単独で最大のCO2排出源として、我々はこうしたクリーンな石炭利用の新技術に投資しなければなりません。気候変動に効果的に対処するには、クリーンな石炭を扱わなければなりません。それはオーストラリアにとっても、日本にとっても、そして全世界にとっても核心になる仕事です。
私はこの問題についても福田首相と討議する予定です。
しかしながら、クリーンな石炭利用の技術だけを推進しても、炭素排出削減の課題解決にはならないでしょう。
オーストラリアと日本が、気候変動で協力できるその先の分野は、森林破壊の問題です。毎年世界では、およそ1300万ヘクタールの森林が失われています。これは世界における人為的な温室効果ガス排出のおよそ20パーセントに相当します。
オーストラリアは、国際森林炭素計画 (International Forest Carbon Initiative) を通じて、森林破壊に由来する二酸化炭素排出削減に対する公約の概要を作成しました。
この提案の主な目的の1つは、森林破壊による排気を削減するに際して、市場ベースの取り組みを推進することです。雨林に貯えられているカーボン量を測定することは、森林破壊を防止するための最初の重要なステップです。
この提案を通じて、オーストラリアは近隣諸国、特にインドネシアおよびパプアニューギニアと作業していますが、この二カ国は世界に残存する森林地帯を有する2大国です。
今年3月、私はパプアニューギニアを訪れて、森林カーボン協力協定に調印してきました。今週末には同様の計画を、ユドヨノ大統領 (インドネシア) と話し合うことにしています。
我々のパプアニューギニアおよびインドネシアとの作業を通じて、これらの諸国に森林カーボン市場への参加を促し、排出が避けられることによって得られる経済的な恩恵の拡大を支援することが可能です。
ここにもオーストラリアと日本が協力できる余地があります。
我々両国は、森林に貯えられたカーボンを測定し、監視するための最新技術システムを持っていまが、それには衛星による監視と地上での観察を組み合わせることが必要です。
オーストラリアの「全国カーボン会計システム」 (National Carbon Accounting System: NCAS オーストラリア国土における温室効果ガスの排出源と吸収源をすべて計上する政府のシステム) は、これまでに開発された最も有効的なシステムの1つとして広く認められています。
私は東京での会談で、オーストラリアと日本が域内の諸国に対し、森林破壊を減少させるため市場ベースの計画を支持し、生物の多様性保全に大きな貢献をしながら、維持可能な生活を促進できるように、我々の専門知識を提供することでの同意ができればと望んでいます。
オーストラリアの政策で二番目の柱は、気候変動の影響に適応する努力です。オーストラリアは、変化した気候条件に対応できる能力を促進する諸国を支援しています。我々は、太平洋の島しょ諸国が気候変動問題に対応するのを助けるため、1億5千万豪ドルの予算を計上しています。
そして去る3月に、オーストラリアはポートモレスビー宣言 (Port Moresby Declaration) を発表して、太平洋の諸国との一層強力で密接な関係に対する、我々の見解の要点をまとめました。
こうしたあらゆる努力のなかで最も必要とするのは、気候変動に対応する効果的な国際体制で、これが気候変動に対するオーストラリアの行動計画の三番目の柱です。
国際社会は、力を合わせて行動しなければなりません。我々には、バリ会議 (Bali Conference) で同意したロードマップに沿って、計画を実行する必要があります。失敗すれば、その結果は取り返しがききません。
我々は、野心的でなければなりません。日本は、京都議定書の提案に際して野心的でした。我々のすべては、2012年以降の気候体制に対して野心的でなければなりません。
我々は、先進・発展途上双方の諸国の行動に基づいて、気候変動に対する確実な行動ができるように、全世界的な体制の確立を目指すべきです。
日本は、主要八カ国 (G8) 首脳会合と、主要経済国会合 (MEM) の首脳会合開催に至るまでの、非常に重要な役割を果してきました。
私は、世界の気候論争に本当の原動力が与えられるような結果が生まれるのを支持するため、福田首相に協力するつもりです。
私は、国際的な対応の枠組みを形成するための主要なステップとして、世界が同意する長期的な排出削減の目標が必要であると考えます。私はその論争に対する日本の貢献を歓迎します。
我々は、発展途上国にも、経済的・社会的な発展を継続すると同時に、排出増加を減速させ、エネルギー効率の向上を重視するという行動を取らせることが必要です。
我々は、共通の、しかし国ごとに異なった責任を持った全世界の同意に基づいた、国際的な決意を結束するに際して、すべての主要国の行動が反映された、効果的な未来に向けての世界的な枠組みが確立されるのを望んでいます。
その約束の性格と規模は異なっても、世界のすべての国家が夫々の役割を果し、その実行のためには国家的に適切な拘束力のある決意をすることに、我々は全面的な期待を寄せています。
京都で始動した使命が、その次の章であるコペンハーゲン会議 (Copenhagen Conference) で頂点に達するまでの18ヶ月間、私は日本と緊密に協力して行きたいと思っています。
気候変動は、もう一つの重大な世界的課題、エネルギーと食料の安全保障にも関連しています。こうした問題の論争でも、日本は世界的なリーダーの一国です。
目下進行中のエネルギー資源の価格改定を踏まえて、エネルギーの安全保障はとりわけ重要です。現在我々は、1970年代の原油ショック以来最大の原油価格高騰を経験しています。世界の原油価格は空前の高値です。イラク戦争後の5年間に、世界の原油価格は400パーセントも上昇しました。
これは、エネルギーと食料の両方で、世界のインフレに深刻な影響を及ぼしています。需要と供給のバランスの崩れが、原油価格に上昇の圧力をかけています。
そこで我々は、均衡かつ両側面への対応が必要です。勝手に行動して、世界の原油価格に影響を及ぼしている政府があります。しかし、力を合わせて行動すれば、達成できることが多いのです。エネルギー価格の高騰に対する我々の対応に、統制された世界的な対応による関与を含める必要があるのはこのためです。
国際社会は、供給と需要の世界的な不均衡を是正しなければなりません。石油輸出国機構 (OPEC) に対しては、市場での適切な結果を達成するため、供給増加の圧力をかける必要があります。OPEC以外の諸国からの供給拡大が、期待から外れていることも取り上げるべきです。
原油の産出技術の多くは陳腐し、非能率的で、柔軟性がなくなっています。全世界のエネルギー部門に投資できるように、開放性も必要です。投資の増加と技術の革新は、探査の拡張と、地下からの採油効率向上を助けることになるでしょう。
同時に、我々には世界的な需要削減の措置をとる必要があります。中国とインドの急速な経済発展が、エネルギー需要増加の原因になっています。経済発展は、エネルギー需用増大のきっかけになります。
例えば、世界中の自動車使用台数は、現在の5億台が2020年までには、10億台を超えて増加すると予測されています。このことは、需用を削減するために我々は、エネルギーの効率と輸送燃料の大幅な効率化の問題を、解決しなければならないことを意味しています。
原油の場合、経済と環境への緊急的な対応、すなわちエネルギー効率の向上を含めた、需用の削減が必要なのです。
来月G8が日本で会合する時、エネルギー安全保障とOPECの生産、世界的なエネルギーの効率化が主な議題になるでしょう。
エネルギー価格の高騰は、入れ替わりに食料生産へ影響を及ぼしています。オーストラリアのスミス外務大臣は、先週ローマで開かれた食料と農業のハイレベル会議に出席しました。スミス外相は、国連の潘基文(バンギムン)事務総長による「グローバル食糧危機作業部会」(Task Force on the Global Food Crisis)設置の決定に対するオーストラリアの支持を、改めて表明しました。
オーストラリアは、半乾燥地帯での農業研究や生産、適応性などについて専門知識を基にした、食料安全保障に対する包括的な長期行動計画を推進しています。
オーストラリアは、2007-08会計年度の国連世界食料計画に、およそ1億ドルの拠出を約束しています。日本政府も、国際緊急食料援助に対し非常に多分の財政支援を行っていることは、私も感謝したいと思っています。
世界的なエネルギーと食料危機の原因と結果に対処することは、今後何十年にもわたって極めて重要な課題となるでしょう。日本とオーストラリアが、どのようにしてこうした世界的な課題に対応するかは、世界の主要新興国家の多くが存在する、我々自身の地域の将来にも関係することでしょう。
オーストラリアと日本は共に、最も急速に成長し、最も急速に変貌する地域にあります。アジアは2020年までに、全世界GDPの45パーセント、世界貿易の3分の1、あるいは世界におけるエネルギー消費の半分以上に相当する成長を遂げるでしょう。
世界の経済的・戦略的な加重がアジアに移行するにつれ、我々はその結果を予測して、地域の将来を形成して行かなければなりません。我々は、地域の構造を、如何にして次の段階に引き上げるかを検討しなければなりません。
開放されて、安定し、持続可能な地域を支えるには、しっかりした制度が必要です。
現在この地域には、APEC、10カ国が加盟するASEANグループ、ASEANプラス3 (日中韓) 、ASEAN地域フォーラム、東アジア首脳会議など、数多くの組織があります。その各々が夫々積極的な役割を持っています。しかし、現在設定されているこれら機構の何れにも、この地域が効果的に将来を形成するのに必要とする、包括的な枠組みを提供する能力がありません。
この地域は、域内での政治的・経済的・安全保障上での対話と協力、そして同意すれば共同の行動が取れるようになるような、組織を必要としています。私が、アジア太平洋コミュニティーについての討議の開始を提案したのは、こうした理由からです。
ヨーロッパと同様のモデルを模倣するものではありません。経済連合や、金融連合、排他的な関税連合などではなく、さらにありきたりの安全保障協定などでもありません。
我々の環境は、ヨーロッパとは大きく違っています。しかし「協力する」ということが原則であるコミュニティー内においては、このような感覚の促進が重要であって、それが域内で起こりうる将来的な紛争を避けることにもつながるのです。
アジア太平洋コミュニティーの構築には多くの労力が要るでしょうが、20年前に、オーストラリアと日本がAPECを無から築き上げたことを思い起こすべきです。
20年後のチャレンジは、APECを次の段階に押し進め、初めての包括的なアジア太平洋コミュニティーを創り出すことです。
私は先月福田首相が「"共に歩む" 未来のアジア」について行われた重要な演説に、慎重に注目しました。アジア太平洋の世紀が平和であることを保証するには、我々のすべてが協力して行動しなければなりません。
我々の誰一人として、この地域や世界が、2020年に、あるいは2050年に、どうなっているかを、正確に知る者はいません。しかし、私は、今我々が行う決断が、今後の世界を形成するだろうということを知っています。
オーストラリア政府が、我々が直面する課題に対して、日本のような親友やパートナーと協力することを決意しているのは、このためです。
核兵器や気候変動、エネルギーと食料の安全保障、そして我々の地域全体の未来という重要な課題に関しては、特にそのことが当てはまります。
50年以上も前に、オーストラリアと日本は、不朽の友好と関係の樹立を目指して、最初の正式なステップを踏み出しました。今や我々は、真のパートナーです。私は、両国がその基盤を生かしてゆくことを望んでいます。
我々の二国間における政治的、安全保障上、ならびに経済的関係を拡張・深化させるために、そして、前途に展開されるアジア太平洋の世紀における、域内や世界に対する重大な課題に取り組むため、相互の協力を拡張・深化させるために、日本とオーストラリアは、協力して未来を築こうではありませんか。