スピーチ・ステートメント・メディアインタビュー
「不朽の友好、不朽の経済パートナー」
オーストラリア連邦政府ケビン・ラッド首相 日豪経済委員会主催夕食会での演説
2008年6月11日
スピーチ DFAT_20080611
ご紹介有難うございます。今夜の夕食会を主催された日豪経済委員会に感謝します。また、この催しに協力されました日本商工会議所、日本経団連、日本貿易会にも感謝しております。
日豪両国の連携を推進している主要ビジネスを代表する皆様に、お話しする機会を得ましたことは光栄です。
特に、今井会長 (今井 敬 日本経済団体連合会名誉会長) にも厚くお礼申上げます。
会長が、当時の冨士製鐵(現新日本製鐵)の調査団として、初めてオーストラリアを訪問されたのは40年以上も前のことでした。その2年後の1963年に、冨士製鐵はウエスタン・マイニング社と鉄鉱石供給の契約に調印されました。当初の鉄鉱石積み出し量は、今日の水準からすると少量でしたが、それがオーストラリア経済と日本産業の双方に貢献してきた、新日本製鐵とオーストラリアの資源部門との関係の発端でした。会長をパイオニアと申上げても過言ではありません。
今井会長の新日本製鐵での強力なリーダーシップのお陰で、日本が現在も引き続いてオーストラリアの製鉄原料に対する、最大のバイヤーであることが保証されてきました。そしてあなたは、1997年以来、日豪経済委員会の会長としての役割を通じて、日豪関係の拡大に貢献してこられました。
この役割の中で、日豪自由貿易協定 (Australia-Japan FTA) に対するあなたの主張は、この交渉を進めるに際して日本で必要な意志の構築にとって不可欠です。
新日本製鐵と日豪経済委員会の双方における、あなたの指導力を通じた両国関係への貢献に、私は心から感謝の意を表したいと思います。
この貢献を讃えて、2003年度にオーストラリア最高位の名誉勲章である Companion of the Order of Australiaを、あなたに叙勲できましたことを喜んでおります。オーストラリアは、日本に数多くの友人を持っていますが、その中でもは最も親しい友人の一人です。
皆さん、私はまた東京を訪れることができて大変嬉しく思っております。日本には月曜日に到着しましたが、新幹線に乗り、途中色々と日本の素晴らしい景観を楽しんで、仕事をしながら東京へやってきました。
首相として日本を訪問するのは今回が最初なので、日豪間の友好と協力についての本日の話しの主題に入る前に、新しいオーストラリアの政権と国内における課題の概要を、簡単に説明したいと思います。
オーストラリアの新政権は、オーストラリアの経済改革計画再開を約束しています。われわれは、オーストラリアが世界経済の中で、確実に競争力を維持して行くことを目指しています。
我々は、すでに来年度2.75パーセントの経済成長を期待していますが、これで連続17年間の成長になるでしょう。しかし、我々は経済基盤の強化を決意しています。
我々は、国の将来に不安を宿さないように、21世紀の厳しい挑戦に立ち向かえる、近代的なオーストラリアの確立を決意しているのです。
新政権の包括的な長期経済計画には、二つの重要な要素があります。我々は、経済基盤の安定を確実にさせるため、国家経済全体、マクロ経済の管理を厳格に行う覚悟です。
そして、我々は、人的および物的資本に投資することによって、オーストラリアの低迷する生産性の業績を向上させるため、実践的なミクロ経済政策の促進を決意しています。
我々は、労働と企業を振興する奨励策を講じるつもりです。
我々は、税制を改革し、労働力の参加を増進し、労働の障壁になる福祉問題と取り組む決心をしています。
先月発表しました新政権最初の予算は、オーストラリア経済の競争力を変貌させようとする計画の第一歩です。
我々の包括的な最重要課題は、責任をもったマクロ経済の管理です。そして、長期的には、経済の能力面で、すなわち熟練技能とインフラで、慢性的な投資不足に対処する計画が、予算に編成されました。
経済的な安定には、黒字財政が欠かせません。しかし、財政の黒字だけで経済構造を変えることはできません。経済の基本的構造に対する根本的な改革を確実に実施するには、奥深く広範なミクロ経済の改革が求められます。
生産性の向上は、たった一つの全般的で大まかな政策だけで、達成できるようなものではありません。それは産業毎、市場毎、部門毎の能率向上の集積なのです。 我々は、オーストラリアにおける生産性の業績増進のため、次のようなミクロ経済改革計画を実施します:
- 出来得る限り最善の規制環境の確立
- 危険負担と革新を支持する環境の開発
- 人的および物的資本への投資
- オーストラリアの未来への投資と、国の長期的インフラ障害の克服
我々は、これが大きな課題であることは分かっていますが、やり遂げる覚悟をしています。
その一例として、教育に関する大きな計画を発表しましたが、それには、学校に高速ブロードバンドの通信システムを提供し、数学、科学、英語、歴史などで、新しい全国的な教育課程を開発しようとしています。オーストラリアは、競争力向上のためにこうした投資が必要なのです。
経済戦略のその他の重要な部分には、グローバル経済との関わりがあります。我々がグローバル経済に積極的に参加すれば、オーストラリア国民に最善のものをもたらすことができることを、我々は認識しています。
そして、我々は、この地域や全世界で、友人や協力者たちと、政治的・戦略的に関与しなければなりません。
オーストラリアの新政権は、国際関係で次のような三本の柱を立てています:
- 我々とアメリカとの同盟
- 我々が国連の加盟国であること
- アジア太平洋地域との包括的な関与
オーストラリアにとって、日本はこれら三本の柱のパートナーです。
オーストラリアにとって日本との関係は、1957年に締結された通商条約で現実に始まりました。実は、1957年は私の生まれた年なので、個人的にもその条約のことを確認しています。
その後何十年かの間に、両国の関係は急速に発展・拡張してきました。1976年のNARA条約 (日豪友好協力基本条約) から、昨年の共同宣言による日豪安全保障連携の結成に至るまで、オーストラリアと日本の関係は、戦略・安全保障・経済などでの包括的な協力関係の一つです。
それは永続的な友好の関係です。我々は、真の友人でありパートナーなのです。そして、それはオーストラリア政府が推進を決意している関係です。
過去6ヶ月の間に、オーストラリアの閣僚が6人も(合計8回にわたって)日本を訪れたのはこのためです。これら閣僚の代表する次のような様々な大臣の職務が、両国関係の奥深さを物語っています:外務、貿易、産業と革新、資源・エネルギーと観光、気候変動、農業などです。閣僚たちは、両国関係のあらゆる分野で、活力が維持されているのを確認するために訪問しています。
我々の関係の基礎は実に堅固ですが、如何に基礎が固くても、関係は修復が必要です。両国は民主主義国家です。我々は共にアメリカの同盟国です。そして、両国はお互いにとって極めて重要な経済関係を持っています。
日本は、オーストラリアにとって絶えず最大の輸出市場であり、この状態は40年以上にわたり続いています。そして、日本はオーストラリアにおける主要な投資者であり雇用者です。我々は共に、この経済関係から多大の恩恵を受けています。お互いにグローバル化を支持し、推進しています。
我々には、このように共通した特徴があり、地域的あるいは世界的な関心を互いに分かちあっています。オーストラリアと日本は共に、この地域が安定して、繁栄し、自由であることを望んでいます。
我々には、APECの創設に際して、力を合わせて協力した歴史があり、私は、これからこの地域の構造が次の段階へと進むに際して、日本と密接に活動して行きたいと希望しています。気候変動や核軍縮のような、我々が当面している大きな世界的な課題でも、我々はパートナーなのです。
これまでに私が日本で訪れてきた場所は、我々の関係の幅と深さを示唆しています。私は広島と京都を訪れ、京都大学では、これら二つの都市で象徴されている二つの大きな世界的な課題、すなわち核軍縮と気候変動について、講演する機会を得ました。
火曜日には名古屋と訪れ、トヨタの社長 (渡辺捷昭トヨタ自動車社長) にお会いしました。
昨日は、ジャスコのスーパーマーケットへ行ってきましたが、ここではイオン・ストアの岡田社長 (イオン株式会社岡田元也代表執行役社長) が、新しくオーストラリア生産物の大規模な販売促進キャンペーンを行う発表をされました。
また今朝は、天皇・皇后両陛下に拝謁する光栄に浴しました。
そして明日は、福田首相と両国間の友好・協力促進の方法について、お話しできるのを期待しています。私は、福田首相と協力して、両国の関係を新しいレベルに発展させるのを期待しています。
皆さんが両国関係に目を向けたとき、経済関係の重要性を認識されるに違いありません。そして、両国の経済関係の基盤は、何といっても資源の貿易です。
昨年総理になられて間もなく、そして私が首相になる前に、福田首相は豪日および日豪経済委員会の合同会議で、演説を行っておられます。その時、首相は、日本は石炭と鉄鉱石の輸入の半分以上をオーストラリアに依存していると述べて、資源貿易の重要性に言及されました。
それは両国関係の深さを象徴する一つの事実です。これは何十年も前に、今井会長のような先駆者のお陰で始まり、双方に多大の恩恵をもたらしてきた貿易関係なのです。
オーストラリアから原料を求めることで、日本の企業はオーストラリア資源部門の開発促進を援助しました。日本企業にとっての信頼できる供給者として、オーストラリアは日本の重要な産業部門の確実な発達を支援しました。そして、21世紀の今日でも、この資源関係はこれまでと変わりなく強固です。
我々は共に、この関係から多くの利益を受け続けています。オーストラリアは長期的なマーケットを、そして日本は安定した供給源を維持できているのです。
オーストラリアは、日本にとって安定した供給保証の問題が重要であることを理解しています。オーストラリア政府は、両国間の長期的な商業関係の促進支持を約束しています。
私は、絶えず資源貿易の将来に目を向けることも重要であると思います。
日本の投資家は、オーストラリアの資源計画促進を援助するため、資金や長期的な調達契約を提供して、継続的に重要な役割を果しています。
私は、オーストラリア政府はオーストラリアへの投資を奨励することを約束していると、申し上げたいと思います。外国からの投資は、オーストラリアの発展に絶えず重要な役割を果していて、我々はそのことを認識し、その継続を期待しています。我々は外国からの投資を歓迎します。特に、再生可能なエネルギー部門を含めた、新しい部門への投資を歓迎しています。
三井物産がビクトリア州での風力発電事業に注ぎ込む300億円などは、気候変動のチャレンジに取り組む我々を援助してくれています。
オーストラリアにおける日本の投資は、単に資源だけでなく、多くの分野で見られます。
昨日は名古屋を訪れ、トヨタ自動車の渡辺社長にお会いしました。トヨタ自動車は、オーストラリアに投資している大手企業です。およそ4000人の従業員を雇用し、昨年は8万台以上の車両を生産してオーストラリアから輸出しています。そして昨日、トヨタ自動車は、2010年からオーストラリアでハイブリッド・カーの生産を開始すると発表しました。トヨタは、オーストラリアと日本の経済関係の素晴らしい事例で、我々とはすでに深い関係にありますが、さらにこれを一層推進する方策を編み出さねばなりません。
ビクトリア州におけるトヨタ自動車の投資は、オーストラリア経済に対する信任投票と言えますが、これこそ我々が誘致を望んでいる投資の形態であって、開発を希望している分野、すなわち斬新なハイテクに対する投資を象徴するものです。
オーストラリアの製造業に対する日本の投資は、自動車部門を遥かに越え、その重要性は引けを取りません。
日本の企業は、オーストラリアの加工食品部門にも大きな投資をしています。雪印 (雪印オーストラリア) は高級チーズや育児用乳製品を製造し、日本やその他の国に輸出しています。
現在日本のキリン (キリンビールの持株会社キリンホールディングス) は、オーストラリア最大手の乳業会社オーストラリアン・ナショナルフーズを子会社にしています。キリンは、パース (西オーストラリア州) の大規模な工場でビール醸造のためのモルト (麦芽) も生産し、日本でかなり人気の高い琥珀色した飲料の主要な原料として、その大半を日本に送り返していると私は聞いております。
また、ビクトリア州バララットにある工場で乾麺を製造している企業に、はくばくオーストラリア社 (Hakubaku Australia Pty Ltd) があります。
何故私は日本の投資を強調しているのでしょうか? それは、こうした投資が我々の二国間関係で成長しつつある、洗練さを浮き彫りにしているからです。そして、こうしたことこそ、我々が二国間の自由貿易協定 (FTA) を交渉するに際して記憶に留めなければならない、複雑な相互関係なのです。
原材料の輸入者としてでも、あるいは最終的に日本で消費される食料のオーストラリアにおける加工者としてでも、日本の企業はFTAから恩恵を受けることになるでしょう。相互に利益のある協力には、多くの機会があります。
昨日、私が東京に着いて最初にしたことは、品川にあるイオンのスーパーマーケット訪問でした。岡田社長は私を案内し、7月にジャスコの関連店舗で「オーストラリアフェア」を開催することを発表されました。
このフェアでは、フルーツや野菜から、素晴らしい高級オーストラリア・ビーフに至るまで、ジャスコ・ストアで提供される様々なオーストラリアの産物に、焦点が当てられることになっています。
それは両国経済関係の深さを示す一例です。それは投資と貿易の連携、および最終的には日本の消費者が受ける恩恵を明らかにしています。
そのことが、オーストラリアにとって、両国の自由貿易協定で農業を取り扱うことが重要であるとする理由です。オーストラリアにとって、農業は輸出の主要な一部門です。
そして、日本にとっての安定した供給者であり、友人である実績を持ったオーストラリアは、日本に対する食料供給者としての役割を拡張するのに適していると、我々は確信しています。
オーストラリアは、輸出を通じて、日本が必要とする食料供給の役割を喜んで果します。日本が輸入している農産物のほぼ10パーセントは、オーストラリアの生産物が占めています。
生産や加工食品と同様に、両国の農業関係では投資が主要な役割を果しています。私は、イオンがタスマニアで広大な肥育場と家畜の処理センターを運営していて、「オージービーフ」のブランドが日本の消費者に非常に人気のあることを知って、非常に興味深く思いました。そして、日本人やオーストラリア人の操業する施設が、日本の農業にとって重要な家畜の飼料や、農薬、肥料などを、オーストラリアで生産しているのです。
こうした投資と貿易の連携が、日本の消費者に莫大な恩恵をもたらしてきました。そして、FTAを通じて農業貿易に対する現在の規制が解決されれば、消費者は更なる恩恵を受けることになるでしょう。さらに、FTAは日本の食料安全保障にも大きく貢献することができるでしょう。
世界的に価格が高騰しつつあり、その継続が予測され、また日本の消費者が長年の間に初めて、ある種食品の供給不足を経験している折から、FTAは日本に対する高品質で安全な食料の供給を保証する助けになるでしょう。
FTAは、日本に対するオーストラリア食料の供給強化と、日本農業部門の競争力増進も支援するでしょう。オーストラリアには、安定して安全な供給者であり、日本の友人であるという確固とした実績があり、この役割を今後も続けてゆく体制が整っています。
ここまで私は、両国の経済関係での伝統的な分野である資源や農業、自動車などについて述べて参りました。これらのすべては、両国関係のなかでの重要な要素であって、貿易の多くを占めています。
しかし私は、その他の部門の将来についても、検討すべきであると思っています。それは、クリーンな環境の保護技術や、バイオ技術、食料技術、教育輸出、金融サービスのような部門です。オーストラリアは、こうした分野で現実に熟練した技術を持っていて、我々両国間での協力が拡大できる基礎になります。
観光が、長らく我々の関係の重要な部分でした。私の故郷クイーンズランド州は、オーストラリアと日本の観光関係拡大を促進する最前線でした。過去10年間に、およそ600万人の日本人がオーストラリアを訪れています。
しかし、オーストラリアの国内総生産の4分の3以上がサービス部門からの収入であるという事実にも関わらず、日本へのサービス貿易は、観光を計算に入れても、対日貿易全体の僅か8パーセントほどにしか達していません。ここには膨大な成長の余地があるのです。
私は、オーストラリアのサービス提供者にとっては、日本は挑戦的なマーケットになる可能性があると思っています。しかしまた、オーストラリアには、この貿易促進の活用に適した利点もいくつかあると、私は信じています。
例えば、金融サービスの部門です。1980年代に、オーストラリアは退職基金制度を徹底的に手直ししました。退職のために蓄えることを、すべてのオーストラリア人に義務づけました。これによって過去20年間に、オーストラリアでは多額の基金が蓄積できるようになりました。そして、この基金からのおよそ1兆ドルが、オーストラリアの資金運用産業の基盤になっています。オーストラリアのこの産業部門は、現在世界で4番目の規模です。それはダイナミックで革新的な産業です。そして、規制が行き届いています。
日本の年金基金も、およそ2兆米ドルと推定される、巨額の基金です。特にその両方を合わせると実質3兆米ドルの価値があるので、両国の二つの部門に掛け橋を構築すれば、お互いに得るところが多いであろうと、私は思っています。
我々の金融部門は、豊富な経験を蓄積しています。オーストラリアの専門家には、両方のマーケットに通用する熟練したノウハウがあります。我々としては、両国の金融部門の専門家や機関は、どうすればお互いのマーケットにアクセスできる機会を、一層拡大できるかを検討すべきです。オーストラリアの金融サービス部門には、世界的な競争力があり、日本でもその機会を最大限に活用するのに適した特性が発揮できます。
我々は日本と同じ時間帯にあります。オーストラリアには、高度に熟練した労働力があります。そして、オーストラリアでは、アジアに精通した専門家、特に日本に詳しい専門家が増加しています。
今日私は、オーストラリアと日本の金融部門代表者と昼食を共にしましたが、この部門にはどれだけ多くの可能性があり、この業界の中にはどれほど大きな意気込みがあるかを教えられました。
明日は福田首相と、どうすれば我々の規制機関と企業の間の対話を拡大して、この関係を一層推進することができるかを討議できるのを期待しています。
そして、勿論、自由貿易協定の交渉を通じて、サービス部門での機会を生み出すことができるのです。もし我々が将来に向けて経済関係からの恩恵を確保しようとするなら、その前進方法を考えなければなりません。
先にも申上げた5つの部門、すなわちクリーンな環境保護技術、バイオ技術、食料技術、教育輸出、金融サービスのような部門のような、お互いの接触を促進できる特定の部門があります。そして、こうした新しい部門での協力を通じて、新しい関係の土台を構築できるかも知れません。我々は野心的でなければなりません。
オーストラリア政府は、日本と包括的で質の高いFTAを締結する決意をしています。それはただ単に、商品貿易を拡大するためだけが目的ではないのです。我々は、両国間のFTAを投資の障壁を取り除き、サービス貿易の成長に拍車をかけ、そして経済協力のその他の新しい分野を開発する手段として考えるべきです。
分野によっては、日本が微妙な問題を抱えていることは、私も理解しています。しかし、交渉の現時点では、我々が推進できる最善で最も包括的な協定の締結を目指すべきです。 野心的な協定を目指す必要がある理由の一つは、世界的な貿易の機構であるWTOを支持する協定を、推進しなければならないからです。
オーストラリアと日本は、ルールに則った自由貿易制度からの恩恵を受けてきた主要な国なのです。日本は、自国の生産物のために世界市場にアクセスしてきました。オーストラリアは、全世界で自由に貿易をすることができました。従って、我々はこの制度を弱体化させるようなことなく、我々の貿易関係がこの制度を支持し、維持して構築の助けになることを保証するのでなければなりません。
また我々には、単に二国間だけでなく、どうすればアジア太平洋地域におけるビジネスを、支持することができるかをも検討する必要があります。開放された市場と経済改革こそ、経済発展を促進させる最善の策であるという考えに対する、確固としたコンセンサスを築き上げてきました。
私は、APECが域内におけるオーストラリアと日本の協力のシンボルであるだけでなく、それが重要な影響力を持っているので、APECを強く支持しています。
しかし私はまた、2020年に我々が望む地域機構のあり方についても、討議を始める必要があると考えています。APECは、遅くとも2020年までのアジア太平洋における、自由で開放された貿易と投資の実現を目標にしています。それは、我々が追い続けなければならない目標です。
2010年には、日本がAPEC会議の開催国になるので、今後の数年間は我々にとって、この地域が直面している大きな課題の解決に協力が続けられる絶好のチャンスです。
そして、オーストラリアと日本は、東アジア首脳会議 (East Asia Summit) のような、現在域内にあるその他のすべての機構でも、密接に協力しています。
ASEAN plus 6 (ASEANプラス日本、中国、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランドの六カ国)での FTAに関する、日本の政府間以外 (second-track) での研究に対する提案を、オーストラリアは喜んで支持しました。我々は、この提案を通じて域内での金融協力の促進に関しても、力を合わせて作業しています。
地域機構の次の局面を検討し、2020年、さらにその先に向けてのアジア太平洋共同体 (Asia Pacific Community) の開発に向かって進む場合にも、両国が緊密に協力して活動できることを望んでいます。
私は先週行った演説で、オーストラリアには、域内を巡回して、域内諸国の一層の団結を図り、アジア太平洋共同体の構想を推進するための討議を行うため、ハイレベルの特使を任命する用意があることを発表しました。
この特使には、APECの発展で重要な役割を果した、オーストラリアの優れた元外交官ディック・ウールコット氏 (Dick Woolcott) を任命する予定です。ウールコット特使は、巡回の途中に日本を訪れるでしょうが、私は日本のビジネス界の皆様が彼と会って、アジア太平洋共同体の構想について意見の交換が出来ますことを切に願っております。
この構想の開発には、ある程度の時間がかかるであろうと思っています。しかし、今すぐ着手して、やがて目標に向かって前進しなければなりません。そして、目標は単純です。それは政治・経済・安全保障などに関連した、我々が直面しているすべての重要課題を対処できる、地域での組織の結成です。
我々のアジア太平洋共同体に対する目標の一部は、域内での連携構築です。そのため、オーストラリアはアジアに精通した人材の集まりが必要なのです。我々には、この地域の言語や文化を理解する人々の集まりが要ります。我々には、タスマニアで仕事しているのと同じように、東京でも平常通りの仕事ができる人材のプールを必要としています。
オーストラリア政府が、オーストラリアを西側諸国の中で最も良くアジアを理解する国にしようと決意しているのは、こうした理由からです。
我々には、すでに足場となる強力な基盤があります。オーストラリアの学校では、日本語を学習している子供たちが20-30万人はいます。日本語は、オーストラリアで最も多く学習されている外国語です。そして、最近の予算では、こうした語学の基礎を拡大するために、6,200万ドルが計上されました。この予算は、日本語、中国語、韓国語およびインドネシア語の指導促進のために支出されることになっています。高校の最終学年で、目標にしているこれら4カ国の言語の1つを学習する生徒数が、2020年までに倍増できるのが、我々の希望です。
こうした理解を広めるのに役立つ地域社会の事業、特に個々の学校や地方の団体が実施している交換学生計画などが数多くあることも、私は喜ばしいと思っております。さらに高校より上のレベルでは、大学での教育や研究で、この地域や日本に関する確りした基礎が整っています。
オーストラリアは、アジアに精通した国になろうとして行った投資で、ある程度の成功を収めています。その最たるものは、日本に関する研究です。これはオーストラリアとって、国の最優先事項の1つです。
オーストラリアにおける日本研究の強さと豊かさは、オーストラリアの大学40校中33校や、その他の主立った専門学校に、日本研究の課程がある事実にも反映されています。前回、2003年に、日本の国際交流基金が実施した調査では、オーストラリアの大学で日本語あるいは日本関連の課程を履修している学生数は、15,000人を超えていました。その数は過去5年間に少しずつ増えています。
オーストラリア国立大学 (ANU)、これは私の母校ですが、ここには日本の社会、歴史、文化、経済、政治、法律など多岐にわたった、世界有数の研究プログラムがあることで知られています。 本当に興味深いプログラムがいくつもあります。例えば、このANUは、法学部の学生と東京の学生をオンラインで結び、リアルタイムでの法交渉の実習を行っています。ANUの学生のいくつかのグループは、交渉のすべてを日本語で行っています。これは熟練の基礎を築く、斬新な授業と訓練の素晴らしい実例であって、これが専門的なサービス部門で行われていることは、我々の強みの一端です。
今からちょうど50年ばかり前に、オーストラリアと日本の関係は目覚ましい成長を開始しました。その成長は今日まで続き、現在我々の間にある安全保障での協力、域内での共同作業、貿易や開発への決意など、包括的な関係の基盤になってきたのです。オーストラリア政府は、この関係を一層強化したいと公約しています。
最初の50年間は、日本を世界一級の製造と消費者向け製品の産業のために確立させ、オーストラリアの農業と資源の産業を世界の最高級に育成するため、産業開発とお互いの補完性を活用した時期でした。
今後の50年は、オーストラリアの伝統的なエネルギーや資源分野での強みと同様に、サービスや付加価値をベースにした継続的な経済関係を創造するために、我々の良く教育された労働力と革新的な適材の企業家たちを、こうした補完性と結びつけて行かなければなりません。
私は、お互いの関係の中で、両国の産業界が果してきた極めて大きな役割に感謝したいと思います。そして私は、この関係を構築し、前進させるに際して、ビジネス部門が政府のパートナーであると考えていることを、皆様に確約したいと考えております。