オーストラリア大使館東京

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スピーチ・ステートメント・メディアインタビュー

第64回国連総会演説

ケビン・ラッド首相

2009年9月23日
スピーチ DFAT_20090923

総会議長、

事務局長、

第64回国連総会にご出席の代表の皆様、

オーストラリアは、1946年の第1回より国連総会に毎年欠かさず出席しており、私も当時と同じ精神をもってこの場にまいりました。その精神とは、時代の大きな課題への解決策を探り、その実現を共に支援するというものです。

課題といっても、新しいものではありません。

我々国際社会が共に作り上げた国連憲章前文に、すでに反映されています。

  • 戦争の惨害から将来の世代を救う
  • すべての人民の、経済的及び社会的発達を促進する。
  • 基本的人権、男女及び大小各国の同権に関する信念を、改めて確認する
  • こうした偉大な試みのすべてを、新たな一連の国際法に反映させる

70年近くを経た今なお、この優れた世界的価値が不変なままである一方、これを適用すべき課題は絶えず変化しています。

本日この第64回国連総会席上で私が申し上げたいのは、国際秩序が直面する現在の課題、つまり世界金融危機や未妥結のドーハラウンド、明らかになる地球の危機的状況、冷戦終結から20年を経てなお解決しない核兵器問題、グローバルガバナンス自体の将来についてです。

ちょうど一年前、ここ国連本部にごく近い場所で、一連の破壊的事件は過去75年間で最悪の世界金融危機の引き金となりました。

私がちょうど一年前に初めてこの総会の場で演説したのは、リーマン・ブラザースの破綻から10日後のことでした。この時、国際金融市場で適切な規制を行う上での課題について意見を述べました。

この改革プログラムは現在、主要20ヵ国・地域金融サミット(G20)や金融安定理事会、国際通貨基金(IMF)を通じて進行しています。

しかし、規制のない金融市場による際限のない貪欲さが、この一年間世界中で、経済的惨状を引き起こしたため、将来的な金融危機の誘発を防止するには、依然多くがなされる必要があります。

総会議長、世界金融危機は、世界経済のガバナンス機関の改革を促す国際社会への警鐘でした。

今日の我々のグローバルガバナンス体制が、抜本的改革を要していることへの警鐘です。

なぜなら、こうした機関の機能不全は、各国政府や外交官、エコノミストにとってのみの懸念ではないからです。

その機能不全の代償を支払ってきたのは、世界中の勤労者及びその家族でした。ウォール街での出来事は、急速かつ無差別に世界のあらゆる場所に波及しました。

ロンドンからリマ、北京からバルセロナ、メルボルンからムンバイといった具合です。

先進国経済、途上国経済の如何を問わずです。

世界金融危機やそれに続く経済・雇用危機は、国境をまたいで、あらゆる人々にその影響を及ぼしました。

わが国も、例外ではありません。

世界金融危機により、オーストラリア市場では株価が55パーセント下落し、1,500億ドル相当のわが国勤労者の退職用貯蓄が吹き飛びました。また何万という国民が職を失いました。失業はさらに増える見込みです。

それぞれの統計数字の背後には、貯蓄の減少、家計や雇用をめぐる将来の不安に今や直面するわが国の勤労者の顔が見えます。

シドニーのリバプールでは軽工業の基盤が衰退し、失業率が過去一年間に4.5パーセント上昇しました。現時点で19,000人が失業中です。

クイーンズランド州ファー・ノース地域にある観光地ケアンズでは、失業率が過去一年に3.7パーセント上昇しました。同地区では、13,300人が失業している計算になります。

パースの東南部郊外でも、失業率はこの一年間で3.3パーセント増え、12,800人が無職の状態にあります。

オーストラリア全土のこのような地域社会では、世界的不況が極めて現実的な形で人々に打撃を与えています。

ちょうど世界中の様々な地域社会で、世界的不況が人々に実際的な影響を与えているようにです。

総会議長、この世界的不況から脱出する道を探る際に、我々はこうした男女や家族の存在を忘れることはできません。

我々の世界経済システム全体は、今回の危機を防ぐのに失敗しましたが、G20 諸国政府は被害を減らし、システム全体の崩壊を防ぐために結集しました。

主要先進国、途上国の政府代表を初めて一堂に会したG20 という枠組みを通じて、各国政府は行動を共にしました。

  • 国際金融システムを直接安定させるため、約13.6兆ドル相当の支援を提供した
  • 財政刺激策として、世界経済へ5.5兆ドルを注入した
  • 後続のいかなる金融崩壊に対しても、その対処が可能であるとの信頼を市場に与えるため、1.1兆ドル相当の資金を国際金融機関に供給した
  • 多くの主要銀行がバランスシートを修復できるよう、不良資産管理のための統合的枠組みを策定した
  • 金融安定理事会を通じて、包括的な金融市場改革プログラムに着手した

こうした異例の介入が、経済危機の連鎖的発生を食い止めるのに成功したと、IMFは評価しています。

しかし実際には、世界経済の回復は確かな状態からは程遠く、多くの紆余曲折が待ち受けています。

さらに世界経済のガバナンス機関は、新たな課題に直面しています。

まず、将来の危機を回避するために、金融市場改革プログラムの完成と、実施が必要です。

第二に、世界経済の回復を予期し、我々は緊急介入策の協調的解除のための枠組みに合意する必要があります。

第三に最も重要な点ですが、持続的な将来の経済成長のための、新たな枠組みを明確化しなくてはなりません。

この枠組みとは、金融面での持続不可能な不均衡や、消費者及び企業の借り入れによる過度の消費、システム上重要な金融機関における無責任なリスク追求といった従来のやり方に、ただ戻るというものではありません。

過去10年の古い成長モデルの失敗の一つとして、経済における効果的な国際協調の欠如が挙げられます。これにより不均衡は確認なしに拡大し、金融機関は適切な監視を受けませんでした。

しかし回復に向けて動くにあたり、我々は世界経済の成長と均衡を促す枠組みを構築しなくてはなりません。

主要経済国間で協調が効果的に行われた場合、世界の成長は著しい伸びを示すとIMFは予測しています。これは5年間で世界的生産高の10パーセント増、もしくは6兆ドルに匹敵します。

この「協調による配当」を実現するために、G20 は世界金融危機の最中に確立された協力の枠組みを基盤として、これを世界の回復という新たな課題に適用させる必要があります。

ピッツバーグは、各国が国内経済政策の効果的協調を行うための枠組みについて合意する歴史的な機会です。

この枠組みには、4つの主要要素が含まれるべきです。

  • まずG20諸国・地域は、均衡のとれた持続的な成長を実現するための共通の目的について合意するべきである
  • 第二に、G20諸国・地域は自らの国内経済戦略について概観を述べ、我々共通の目的にいかに貢献するかを明らかにするべきである
  • 第三に、IMFは個々の国内経済プランを分析し、これらが持続的で均衡のとれた世界成長を実現する上で整合的か、また全体として妥当かどうかの判断を下すべきである
  • 第四に、これらの報告はG20に提出され、これが特定のリスクや脆弱性を明らかにする相互評価(ピアレビュー)過程の土台となるべきである

この枠組みは、現在ドイツが提案している持続的経済活動のための憲章のような、一連の国際的原則の策定と整合性を持つと共に、その策定における重要な要素となるべきです。

総会議長、我々の時代のもうひとつの大きな国際的課題は、気候変動です。

コペンハーゲン会合まで74日しかない中、世界の各国政府は合意から程遠い状況にあります。

気候変動における行動の必要性は、十分に語られています。

しかし今日の段階で、十分な行動はとられていません。

我々全体としての今日までの政治的意思が、この任務に見合うほど十分であったとはいえません。

あまりに長い間、先進国、途上国間の議論は、互いへの非難に陥ってきました。

途上国は、すでに大気中にある、温室効果ガス排出量の大半に対する先進国の責任は否定できないとして、先進国が自らの義務を怠った点を非難しています。

一方、先進国は、新興経済諸国の排出量だけを見ても、途上国が行動を起こさない限り地球温暖化は許容できないレベルに到達すると、主要新興経済諸国に警告しています。

厄介なのは、双方の言い分が正しいという点です。

今世界的に求められているのは、この点を真実として受け止め、それに従った対応を行うだけの指導力です。

実際、あらゆる政府は自国の利益を乗り越え、代わりに世界の先進国、途上国間で「グランド・バーゲン(包括的取引)」を打ち出す必要があります。

この「グランド・バーゲン」は、歴史的責任と未来への責任の両方を受け入れます。

「グランド・バーゲン」は壊滅的な気候変動を避けるために、気候変動の科学、及び気温上昇を摂氏2度以内に抑える必要性を基盤に据えます。

「グランド・バーゲン」は、気候変動に関する今なお未解決の3つの大きな課題を含みます。

  • 気温上昇を摂氏2度以内に抑える上で、先進国と途上国はどのような拘束力ある目標とコミットメントを採用すべきか
  • 将来実行する必要のある緩和・適応措置を支援するために、気候変動に関するどのような官民資金提供の仕組みが必要であるのか
  • 温室効果ガス排出量を実際に削減するにあたり、再生エネルギーや二酸化炭素回収貯留、エネルギー効率、森林伐採及び劣化の回避に関して、どのような技術移転を行う必要があるのか

それぞれの問題は互いに深く依存し合っているため、今後我々が打ち出すべき「グランド・バーゲン」は、この3つすべての課題を解決する必要があります。

我々はこうした交渉で成功を収めるべく、エネルギーと気候に関する主要経済国フォーラム(MEF)やG20など、あらゆる利用可能な国際協力の枠組みを活用しなければなりません。

ここでは、我々全員の指導力が試されるでしょう。

この指導力は、我々の集団的視野を今日という地点から引き上げ、代わりに明日の必要性へ焦点を当てようとします。しかし、時間は残されていません。

私は太平洋諸島フォーラムの議長として、太平洋諸島国にとって時間はすでになくなりつつある点を承知しています。

沿岸部の浸水は今後の可能性ではなく、事実です。

こうした諸島国の人口の50パーセントは、海岸線から1.5キロメートル圏内に暮らしています。

南太平洋を見ると、気候変動が人類に与える影響がよくわかります。

この現代の大きな道義的、環境的、経済的課題に向けて行動するという点で、わが国が国内、地域また世界で役割を果たすべく準備しているのは、このためです。

総会議長、

国連は核兵器の影が覆う中で設立されましたが、その影は今日もなお存在しています。しかし、絶対的に明らかな真実は今も健在です。核兵器の拡散でさらなる安定を得られる国など、決してありません。

北朝鮮が今年行った核実験は、国際社会において然るべき非難を受けました。

北朝鮮の核実験により改めて、安全への道は核兵器の最終的な廃絶をおいて他にない点が判明しました。

わが国は、米国及びロシアが更なる核兵器の削減を確約した点に勇気づけられます。しかし国際社会はまた、より広範な核軍縮、不拡散のアジェンダを進展させなくてはなりません。

核不拡散条約(NPT)は核兵器の拡散を制限する上で、決定的に重要な役割を果たしてきました。しかし本条約は今日、試練に直面しています。

我々は2010年に開催されるNPT運用検討会議を成功させ、これにより本条約が世界の安全保障にもたらす恩恵が増すよう努める必要があります。

NPT運用検討会議の開催前、及び開催後における世界的コンセンサス、及び積極的活動への機運を再度高めるために、わが国と日本は、昨年、核不拡散・核軍縮に関する国際委員会を発足させました。

本委員会は、今後数カ月で最終報告をまとめます。

この報告書は、不拡散・核軍縮体制の強化を実現させる現実的、実際的な道のりを示すことで、最終的に核兵器が廃絶されるのを目指しています。

明日開かれる核不拡散・核軍縮に関する安保理首脳会合は、我々全員にとり重要です。

核兵器のない世界の実現に向けた政治的決意を鼓舞させるために、我々はこの機会を逃してはなりません。

総会議長、グローバルガバナンスの課題は、世界金融危機や気候変動、核兵器の脅威にとどまるものではありません。

ミレニアム開発目標の実現は、極度の貧困を撲滅する上で根本的に重要です。かつてない程の世界的繁栄の時代を経た2009年の段階で、15億の人々が極度の貧困の状況で暮らしているのは、全く嘆かわしいことです。

わが国政府が、政府開発援助を国民総所得の0.5パーセント相当に引き上げるのを確約したのは、主にこのためです。これは、多くの太平洋諸国で拡大している開発格差の解消に努めると共に、その他のアジアやアフリカ、カリブ海地域で可能な限り貧困問題に対処するのを手助けするためです。総会議長、ミレニアム開発目標と同様、ドーハ開発ラウンドは今や立ち上がりから8年が経過しています。

これはあまりに長すぎます。

我々全員の交渉における溝は、深くありません。しかし、ドーハ開発ラウンドの妥結に対する政治的意思の欠如は、大きいようです。世界は長期的な経済の回復を持続させるための、新たな成長の手法を模索しており、ドーハは疑いなく一つの重要な要素です。ドーハラウンドにおける主要交渉国の一つとして、わが国は交渉の溝を埋める手助けをする用意があります。

総会議長、グローバルガバナンス全般にわたる国連の重要な作業の継続を、どうか総会が忘れぬようお願い致します。国際平和維持活動や人道的活動、食料安全保障、女性や保健・厚生、児童や難民をめぐる活動は、いずれも文明化の進んだ秩序ある国際社会ならではの取り組みです。

国連とは、その場所を指すのではありません。また、その組織を指すのでもありません。国連とは、我々そのものです。

「我々、国連の人民は」、国連憲章はこのように始まります。

直面する問題への解決策を見出すと共に、そうした解決策にまつわるコンセンサスを打ち出し、その解決策を実行すべきなのは我々です。

この組織は、意思による行いがその始まりだった訳ではありません。確かに意思も必要ではありましたが、想像という行為がその出発点でした。

これは、世界はどうあるべきで、どうなり得るかについての考えです。

価値ある未来を想像し、その展望を今という現実に見合う形にしていく。これは、指導力にまつわる課題です。

総会議長、これこそは我々の先人が1945年に挑んだ課題でした。これは同時に、我々の世代が将来のために今取り組むべき課題です。総会に対し、感謝の言葉を申し上げます。

(原文は英語)