オーストラリア大使館東京

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スピーチ・ステートメント・メディアインタビュー

「オーストラリアと日本-地域パートナーシップの展望」

マレー・マクレーン駐日大使 講演

2009年9月25日
スピーチ DFAT_20090925

於: 東京大学

ご列席の皆様、

本日の朝、皆様の前で講演する機会を頂きましたことを、非常に嬉しく思います。

東京大学アメリカ太平洋地域研究センターが、オーストラリア研究における客員教授プログラムを開始してから、今年で10年目を迎えましたことを駐日オーストラリア大使としてとりわけ嬉しく思います。

同センターは、わが国及びわが国の地域関与に対する理解の増進を目的に、本プログラムを設立されたと理解しております。この姿勢は、日豪両国民の触れ合いや交流の拡大と発展、及び双方の好感度向上を任務とするオーストラリア政府機関である豪日交流基金も支持するところです。

本プログラムは、日本人学生との知識の共有や、日本の事情を加味した研究の発展のために、優秀なオーストラリア人研究者を日本に招聘するものです。日豪間の理解や学術交流を深める上で、本プログラムは不可欠な役割を担っています。日豪関係に対しこの重要な貢献をもたらしている同センターに、我々は大変感謝しています。また本プログラムの10年にわたるご成功を祝福すると共に、こうした優れた取り組みが今後も長く続くよう心より願っております。

今朝は日豪関係について、特に今後の二国間協力の機会に焦点を当ててお話したいと思います。両国の関係について話すには、まさにこの時期は理想的ではないでしょうか。なぜなら、日豪関係がきわめて強固であるからです。加えて両国、並びに我々が暮らすこの地域、世界では非常に大きな変化がすでに起こっており、また今後も起こり続けるためです。こうした環境の変化により現在は、日豪が一歩下がって、将来協力できる点について検討する上で格好の時期といえます。

こうした重要な変化の中で最も明瞭、かつ直近のものは無論、日本で起きた変化です。最近の衆院選における民主党勝利、並びに鳩山首相の就任は、これまでにない形で政治の風景を変えてしまいました。

オーストラリアのような国にとっては無論、他国との関係のあり方を決定する最重要要因は国益であり、政治的な類似点あるいは差異ではありません。我々の日本との長期にわたる強固な関係は、歴代の自民党政権下で作られたものですが、今後いかなる日本政府の下でも、日豪関係を決定づけてきた関心事項は継続すると思われます。その意味で、誰が日本を治めるべきかという意見を表明するのは、我々にとって適当ではありませんし、ある時点でどちらの政党が与党となっているかは、格別の懸念事項ではありません。日豪は国益や価値観、取り組みについて共有しており、我々は日本の友人、及びパートナーです。この点に変化はありません。

わが国は政権の交代に関係なく、日本との緊密な関係を維持する決意であり、これはここ日本での政権交代以来、我々が高いレベルでの政治的接触を求めてきた点に示されています。ラッド首相は選挙後にいち早く鳩山首相に電話し、祝福の言葉を送った世界首脳の一人であり、両首相は長時間にわたる打ち解けた会話を楽しみました。ラッド首相と鳩山首相は今週水曜日にも、ニューヨーク国連会合の合間に面談する機会を設けました。両首相の40分間にわたる会談では、冒頭10分間に通訳者のみを同席させた一対一の私的懇談が行われました。私の知る限り、これは鳩山首相がニューヨークで行った唯一の、一対一の私的懇談です。両首脳がお互いをファーストネームで呼び合う点で意見が一致するほど、この会合は打ち解けた雰囲気の中で行われました。

両首脳は、早くも非常に前向きで友好的な私的関係を築き始めたように見受けられます。これはより広範な二国間関係が、前向きに進んでいるのを象徴しています。こう考えますと、ラッド首相とスミス外務大臣が日本の鳩山首相、岡田外務大臣との会談を通じて、わが国が日本との関係を、地域で最も重要な二国間関係とみなしている点を再確認したのは注目すべきことです。スミス外務大臣は今週月曜日ニューヨークで、岡田外務大臣と会談しました。

ここで若干本題から離れ、日豪関係がこれほどに重要な理由を明らかにしていきたいと思います。

両国の関係は19世紀にまで遡りますが、その後時を経て深く、強固になり、今では戦略面や安全保障面、経済面での協力を含む包括的な関係になりました。ラッド首相と鳩山首相は今週ニューヨークでの会談で、これらすべての分野において協力を強化する点で合意しました。

この二国間関係の二大支柱となるのは、長きにわたる貿易・投資関係と深まる安全保障・防衛面での協力関係です。この点は後ほど詳しく説明しますが、日豪は第二次世界大戦の遥か以前から主要な貿易相手国同士であった点、両国間には、日米間に次ぐ戦略面での協力関係の枠組みが存在している点をお伝えすれば、このことが十分にお分かり頂けるかと思います。

この日豪関係を支えているのは、価値観の共有や重なる国益、国際的課題に対する共通の取り組みです。両国は人権や自由、法の支配にコミットする、アジア太平洋地域の活力に満ちた民主主義国家です。また、日豪は共に米国の同盟国であり、同様に、地域の平和と安定、繁栄の維持にコミットする国連の積極的な加盟国でもあります。

日豪関係を強固にしているものとしては、深まる文化交流、及び人的交流が挙げられます。こうした交流の深さは、日豪間で100前後の姉妹都市関係が結ばれている点、わが国のすべての州が、日本の都府県と姉妹関係を提携している点からも明らかです。またこの点がより顕著なのが、教育分野です。日豪姉妹校提携の数は652に上り、教育目的で訪豪している日本人留学生の数は、2006-07年に9万人を超えました。実際、本センターのオーストラリア研究客員教授プログラムは、まぎれもなく豊かな人的交流の例といえます。

本プログラム開始以降の10年間、日豪関係は例外的な発展を遂げてきました。そして両国の政治的変化にも関わらず、この進展は続いています。わが国ではハワード前首相の下で11年に及んだ自由党政権に代わって、2007年にラッド首相率いる労働党政権が登場しましたし、日本では無論、今月の鳩山首相率いる民主党新政権の誕生を含め、首相が5人も交替しました。

それでは冒頭の、変化に関する話題に戻りたいと思います。日豪関係には深みと継続性があり、日豪の両政界はこの点を明らかに貴重なものと捉えています。

このため政権交代自体で、マイナスの影響が生じることはありません。実際、日本における今回の政権交代で、両国の政策立案者間には新たな機会が生まれるでしょう。日本での重要な政治的変化の時期において、日豪関係は堅固さと安定を保つと考えられる反面、ある種の変化や、おそらくは新分野での進展の可能性が生まれるかもしれません。また、我々は従来の数多くの課題に引き続き取り組むにあたり、初めての方々と交流を行うことになります。こうした方々と知り合える機会、また日本の新政権と開かれた生産的な対話を行える機会を楽しみにしています。つまり、今は新たなパートナーシップを構築する、将来の成果を培う時期であるといえます。

こうした変化が日本で起きている一方、世界は無論、困難な試練の時を迎えています。世界金融危機とその経済的影響は、今の国際関係の潮流を浮き彫りにしました。この潮流とは、現状を移行期と捉え、世界の変化がもたらす課題に対処できるよう、国際機関や制度に修正を加える必要があるというものです。

こうした変化の主な要素については、無論皆様全員がご存じでしょう。これには以下が含まれます。

  • 世界経済における、アジア太平洋地域の高まる重要性
  • 基本的な経済・政治力や国際的影響力の変化が生み出した、戦略的力関係の相対的変化と、国際社会の一層の「多極化」

こうした文脈において、多国間外交と制度構築が、再び主要な外交政策分野となっています。こうした中、日本の新政権と、少し前に誕生した我々の政権、米国のオバマ政権がこのような活動に対して明確にコミットしているのは、特筆すべき点です。再び、ここには協力の余地がふんだんにあり、本日はこうした分野について、残りの時間の多くを割いてご説明したいと思います。

日豪がお互いのみならず、この地域に恩恵をもたらし得る新たな協調活動に携わる可能性を、特に見ていきたいと思います。ラッド首相は少し前、シンガポールで今年開催されたアジア安全保障会議で、アジア太平洋地域の将来について自身の見解を述べる際に、こう語りました。「アジア太平洋諸国には、選択肢がある。地域の将来を作ろうと積極的になるのか、あるいは受身の態度で地域の進展に様子見を決め込むのか」。日豪は主要国、またパートナーとして、地域の将来を形作る上で主導的役割を積極的に果たす責任と、その機会を得ていることに間違いはありません。

地域の枠組み

日豪は地域の成長を形作るうえで、すでに多くを共に成し遂げてきました。20年前の1989年、ボブ・ホーク元首相と海部俊樹元首相の下で、わが国の外務貿易省と日本の通商産業省は、貿易や投資に関する多国間の経済対話を促進する、アジア太平洋地域の組織作りのため年間を通じて協働し、この対話は1989年11月のキャンベラ会合におけるアジア太平洋経済協力(APEC)の誕生に結実しました。

日豪はAPECにおける現行の作業においても、パートナー同士です。日本は2010年に横浜で、APEC会合を主催します。我々はAPEC 創立以来培ってきた緊密な協力関係を、引き続き行っていきたいと考えています。

我々はまた、この地域にとり非常に重要なASEAN地域フォーラムや東アジアサミットといった、地域に欠かせない組織の設立や、それら組織のその後の活動においても協力してきました。

APECやASEAN地域フォーラム、東アジアサミットは、いずれも地域の枠組みにおいて重要な部分を担っていますが、地域全体で政策の全側面にまたがる権能を付与された地域組織は、現在ひとつもありません。インドネシアやインド、中国、日本、米国などを含む、アジア太平洋地域の主要国代表を一堂に会するような仕組みを見出す必要があると、わが国は信じています。この組織には、我々が将来直面する安全保障や経済、政治上の課題全体に関与する権能が与えられるべきです。

ラッド首相は昨年6月、アジア太平洋共同体と命名された組織を将来的に設立する提案を行いました。ラッド首相はあえて、自らが提案した共同体の構造や規模、参加国を限定する発言をしませんでした。地域が自らの進展を受け身に捉えるのではなく、自らの利益のために将来を積極的に形作っていく点に、ラッド首相は関心を寄せています。彼はこのため現在の主な焦点を、この課題についての議論を喚起する点に当てています。

より広範な権能を付与されたアジア太平洋共同体が、地域のための健全な将来の育成に努めることができるのは明らかです。また本共同体を通じ、地域の経済及び金融面での統合プロセスを、継続的に前進させることが可能です。アジア太平洋共同体は、軍事面の透明性を含め、安全保障分野において協力と協調の文化を育てる手助けをします。そして、近隣諸国に不安ではなく安心をもたらす情報を提供することにより、信頼・安全醸成措置の構築を支援します。本共同体はまた、気候変動や資源・食料安全保障、バイオセキュリティ、テロなど、国境をまたがる課題全般にわたった議論や協力を行う手段を提供します。

ラッド首相によるアジア太平洋共同体の提案と、鳩山首相による東アジア共同体への関心の間に、補完性が存在するのは明らかです。両構想の中心にあるのは、世界経済成長のけん引役に急速になりつつあるこの地域が、地域統合を円滑かつ平和に行うには、先見性のある、組織を基盤とした規則の構築が欠かせないという認識です。鳩山首相はすでに、東アジア共同体とアジア太平洋共同体の両提案には関連性が見られると述べています。ラッド、鳩山両首相は9月23日のニューヨーク会談において、各々の提案について意見交換し、こうした話し合いを継続させる点で意見が一致しました。日豪の手助けによって、APECが地域におけるその主導的役割を不動のものにしたように、この両提案の集約にあたっても、日豪には地域の最良の未来を形成する上で、積極的に協働する機会があります。

本地域以外に目を向けると、日豪には主要20カ国・地域(G20)の枠組みにおける協力を通じ、世界的システムを構築する上で共に行動する機会があります。金融市場を安定化させ世界景気を刺激する点で成功を収めるべく、G20が迅速な行動を取れるよう、日豪は世界金融危機の最中に効果的な協力を行いました。水曜日のニューヨーク会談において、ラッド、鳩山両首相はこの危機に取り組む上でのG20の役割の重要性、またG20における協力を継続させる点に合意しました。

ラッド首相がG20 ピッツバーグ・サミット開催前、ニューヨークの外交政策協会での講演で今週初めに述べたように、G20を国際金融ガバナンスの問題に取り組む主要組織として定例化させるべきであると、我々は強く信じています。G7やG8のような枠組みに、取って代わるものとしてです。世界経済の崩壊を食い止めたのはG7やG8、国際通貨基金(IMF)、他の20世紀に設立された国際金融機関ではなくG20 であり、この枠組みは将来における世界経済の原動力の中心になるのによりふさわしいと、我々は信じています。この目的を実現すべく、日本と共に行動できるよう期待しています。

国連

国連は無論、地域及び世界の安定を現在、将来にわたって積極的に生み出すための日豪協力をより拡大していく上で最良の場です。これは地域的、世界的課題に取り組む上での最も効果的な手段として、両国政府が多国間主義にコミットしている点を考えるとなおさらです。一連の国連会合に対する日豪の両首脳、及び外務大臣の積極的な関与は、両国が共にこうしたコミットメントを行っている点を反映したものです。

日豪は当然、国連を通じた緊密な協力をすでに行っています。毎年の核軍縮決議案の提出など、国連総会において日本が発揮してきたイニシアチブ。北朝鮮のミサイル、核に関連した挑発的行為に対して、国連安全保障理事会に適切、かつ強い態度を取らせようとしてきた日本の努力。わが国はこれらを一貫して支持してきました。

国連制度全般にわたり、わが国は日本の立候補を常に支持しています。今年の早い時期、日本は国連安全保障理事会の非常任理事国に選出されましたが、わが国はこれを支持しました。オーストラリアはまた、日本の安全保障理事会の常任理事国入り、及び国連の効果を高めるためのより広範な改革を、長らく支持しています。

わが国自体も2013-14年任期において、安全保障理事会の非常任理事国選挙に立候補します。我々は平和維持や紛争防止、平和構築などの分野で培った豊かな経験を、この役割に生かすでしょう。日豪両国が相補的利益を有する国連のプロジェクトを通じて、より一層直接的な協力を行うためにも、日本が我々の立候補を支持してくれるよう期待します。

気候変動

気候変動は、両国にとり現実的な重要性を持つ世界的問題であり、地域と世界の将来に対して確実に影響を与えます。わが国は気候変動で日本と緊密、かつ建設的に行動していけるよう願っています。両国はすでに、よりクリーンでグリーンな世界を作る上で、行動を共にしてきた実績があります。日本が議長国を務めた2008年のG8サミットで、気候変動を中心的議題に据えた点を、わが国は高く評価しました。また、オーストラリアが新たにグローバルCCS(二酸化炭素回収貯留)研究所を設立した点を、日本は強く支持しています。本研究所はCCSプロジェクトの発展に媒介的役割を果たすことで、少なくとも20の大規模なCCS実証プロジェクトを展開させるという、G8の目標の実現を手助けしています。日豪は、国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)やエネルギーと気候に関する主要経済国フォーラム、とりわけアンブレラ・グループにおいて行動を共にしています。また、クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ(APP)やAPEC、東アジアサミットにおいても同様です。

鳩山新政権の誕生は、この領域において新たな協力の可能性を開きました。日豪は共に、気候変動に取り組むにあたり、主導的役割を果たす構えを見せています。すべての主要排出国が新たな国際合意に参加する場合、日本は2020年迄に1990年比で25パーセント排出量を削減すると鳩山首相が確約した点を、我々は歓迎します。ラッド首相はすでに、世界が温室効果ガス濃度を450ppmかそれ以下で安定させる野心的な国際合意で一致する場合、オーストラリアは2020年迄に2000年比で温室効果ガス排出量を25パーセント削減する点を約束しています。これは、わが国の全国民が排出量を一人当たり、1990年比でほぼ半減させる計算になります。

日豪は国内的には、こうした大胆な目標の達成を手助けする強制的排出量取引制度の導入に目を向けています。わが国では、炭素汚染削減制度を導入するための法案が2009年5月下院に提出され、6月4日に下院を通過しました。しかし2009年8月13日、上院は本法案を否決しました。政府はしかし、本法案の2009年末までの再提出を示唆しています。

ラッド首相は炭素汚染削減制度の開始に強い決意を示しており、鳩山首相は日本における強制的排出量取引制度の導入を確約しています。両国が将来の炭素取引市場での連携に向けて共に行動することにより、地域における最良慣行を実施する機会がここに提供されています。ここでも、我々はこのような将来を共に形作るために、積極的な共同作業を開始できます。

核不拡散

日豪の政策に一致が見られ、より緊密な協力の余地がある分野として、他に核不拡散があります。両国は昨年すでに、核不拡散・核軍縮に関する国際委員会(ICNND)を合同で発足させました。

本委員会では、日本の川口順子元外相とわが国のギャレス・エバンズ元外相が共同議長を務めています。本委員会は、核兵器の拡散を防ぐと共に、核兵器のない世界を実現させるという最終的な目標に再びコミットするための世界的努力への機運を、再度高めています。来月開催される広島会合で、本委員会は最終報告をまとめる予定です。

本委員会の設立を通じ、日豪は2010年開催のNPT(核不拡散条約)運用検討会議を成功させるべく、強力で時宜を得た貢献をすでに行っています。この分野での日豪協力の継続を示す、前向きの兆候があります。日本の新内閣発足を受けて先週行った発表の中で、岡田外務大臣が核不拡散・核軍縮に関する国際委員会の活動を支持する前向きの発言をされた点を、我々は歓迎しています。また日豪の両首脳、ならびに両外務大臣が今週ニューヨークで、本委員会の報告を土台とするなど、日豪がNPT運用検討会議の成功に向けた協力を継続していくことで合意した点を歓迎します。ラッド政権と鳩山新政権が本会議の成功を実現させ、国際的な核不拡散・核軍縮により幅広い貢献を行うために協力を行う余地は明らかに存在しています。

貿易関係

地域の利益のために積極的に協力活動を行えるような特定の一致点や機会が、日豪の外交政策上には様々な形でいくつか存在しています。ここで少しの間、こうしたパートナーシップをさらに構築し得るような強力な基盤となる、日豪関係の支柱について改めて見ていきたいと思います。

こうした日豪関係の支柱のひとつは、貿易におけるパートナーシップです。これ以外の分野におけるあらゆる進展と可能性を見るあまり、わが国にとり最大の貿易関係が、今も果たす中枢的な役割を無視してしまうのは誤りです。先に述べましたが、この関係は第二次世界大戦のかなり前から、すでに重要なものでした。オーストラリアは1980年代後半にはすでに、エネルギーや資源、農産物の主要な対日供給国としての地位を確立していました。

わが国初の液化天然ガス(LNG)の対日輸出は、1989年にノースウェスト・シェルフLNGプロジェクトを通じて行われました。その後わずか5年で、LNGの対日輸出は813パーセントも増加しました。この1994年、我々にとって日本は最も重要なLNG輸出市場となりました。わが国で新たなガス田が開発される中、最近は新たな契約が発表されており、日本はわが国にとり最も重要なLNG輸出市場であり続けるだけでなく、わが国は日本にとって今後数年にわたり、最も重要なLNG供給国となります。実際、オーストラリアは日本に大量の石炭やウラン、LNGを輸出しており、すでに日本にとってエネルギー全般で最大の供給国となっています。

より全般的に見ますと、日本との双方向の物品貿易額はこの20年で3倍となっています。日豪間の物品貿易は2008年に41パーセント増加しましたが、このうちわが国からの物品輸出は58パーセントも伸びています。こうした大きな伸びは、2008年の記録的な商品価格の高騰を反映したものであり、2009年には若干の落ち込みが予想されます。日本は2008年に、わが国にとり最大の物品貿易相手国に返り咲きました。これは2007年に一度その座を中国に明け渡すまで、日本がその立場をほぼ40年間保持していた点を鑑みるに、記憶に値する点といえます。

現在の世界金融危機により、このような地位を維持していくのは難しいとも考えられますが、日本は今後も長期にわたり、わが国にとり世界2大輸出市場のひとつであり続けるでしょう。

資源の他にも、わが国は日本にとり、農産物における最も重要な3大供給国のひとつです。非常に多くの日本の方々が、豪州産の大麦を原料としたビールや、タスマニア産のそば粉で作った蕎麦、「オージービーフ」によるハンバーグやステーキを味わっています。またわが国の石炭やLNG、ウランを利用した電気やガスが、家庭での照明や暖房、調理に使われています。これは非常に喜ばしいことです。

我々がとりわけ誇りに思うのは、皆様が消費されている食品が安全であり、かつ供給面での安定について不安に思う必要がなく、同様に日本はエネルギーの安定供給面でも、今後もオーストラリアを頼ることができるという点です。

また経済面での日豪パートナーシップの下で、日本からの投資は歓迎されており、トヨタ・オーストラリアは今や、わが国最大の自動車輸出企業となっています。この自動車は、わが国製造業最大の輸出品目です。

日豪経済における高い相互補完性は大きな機会を提供しており、お互いについてより学ぼうと両国民が強く思う気持ちが、ここから生まれています。こうした理由のため、また大きな商業上の理由により、今やこの関係を新たな段階に移行させる時期であると我々は信じています。ご存知かもしれませんが、日豪は現在、経済連携協定(EPA)としても知られる二国間の自由貿易協定(FTA)を交渉中です。本協定により、貿易と投資が両国経済、及び現在の強力な日豪関係にもたらす恩恵が、より確かで強固なものになるでしょう。

二国間のEPA/FTA交渉を実質的に進展させる上で、日本の新政権と交流の機会を持つのを楽しみにしています。これまで日本の一部では、オーストラリアとのEPA/FTAにより予想される否定的影響が語られてきました。しかしこうした懸念の一部は、十分な情報に基づいていないように見受けられます。例えばコメが日本の農業で最も重要な品目である点を、わが国は十分認識していますが、実際にはわが国とのEPA/FTAは、日本のコメ産業に全く脅威を及ぼしません。日本は年間、約850万トンのコメを生産しています。一方、オーストラリアにおける2008年のコメの生産量は、2万トン以下です。わが国はコメの輸入国であり、日本から輸入さえしています。

わが国は日本の輸入食料の3大供給国のひとつであり、日本の農業におけるセンシティビティーを深く理解しています。実際、私は日本の地方を定期的に訪れ、最南端にある種子島や、最北端の北海道の農家の方々と会う機会を設けてきました。こうした視察を通じ、私自身、またわが国政府は、EPA/FTA交渉における日本の農業のセンシティビティーについて、より理解を深めています。

日本とのEPA/FTA締結の見通しに関して、わが国政府はなお自信を持っています。しかし我々は同時に、両国がこの交渉を次段階に移行させるため真摯に取り組む時期が来たと考えています。率直に申し上げて、両国にとり商業的に意味のある成果をわが国は求めています。これには、農業が含まれなければなりません。

日本の食料安全保障は、国内農業の強化や、わが国のような主要供給国との食料貿易パートナーシップの強化を通じて達成されると、わが国は信じています。わが国はすでに、安全で高品質な食料の、信頼できる対日供給国としての然るべき評価を得ています。わが国とのEPA/FTAは、日豪間の食品貿易を一層強化し、日本の農業の生産性を向上させる国内努力を手助けするものです。これは重要な点ですが、EPA/FTAを通じたわが国からの輸入食料・農産品への関税削減は、最終商品を作るために半加工品や加工品を輸入する、多くの食品関連日本企業の調達コストを引き下げます。これは同様に、日本の消費者に対する小売価格の低下につながります。

EPA/FTAはこの他、現在国際エネルギー市場でより圧力にさらされている、日本のエネルギー安全保障を強化するでしょう。また、クリーン・グリーン・テクノロジーやバイオテクノロジー、食品技術、教育、金融サービスといった有望な新分野の開拓にもつながるでしょう。

安全保障協力

日豪関係のもうひとつの支柱となるのが、両国の安全保障・防衛協力です。1990年代、及びアメリカ太平洋地域研究センターによる客員教授プログラムが開始してからの10年間、わが国の日本との戦略分野における関係は大きく開花し、両国にとって最も緊密で重要な関係のひとつになりました。

2007年3月に署名された安全保障協力に関する日豪共同宣言は、日本が米国以外の国と署名した、この種の文書として最初のものです。本宣言は日米安全保障条約と同種の文書ではありませんが、大きな一歩といえるものです。

本宣言は両国の戦略的パートナーシップの拡大を確認し、安全保障面での両国間の協力強化に向けた具体的措置を推し進める行動計画を打ち出しています。この措置には、昨年12月に東京で第2回会合が行われた、毎年開催の日豪外務・防衛閣僚会議(2プラス2)が含まれます。これはわが国がアジアで唯一正式に行っている2プラス2であり、日本にとっては日米以外で唯一のものです。

日豪はこうした枠組みにおいて、両国間の戦略的協力を引き続き強化しようと努めています。昨年12月に東京で開催された2プラス2会合において、わが国の国防大臣と日本の防衛大臣は、防衛協力に関する覚書に署名しました。これはわが国国防軍と日本の自衛隊間の、訓練及び交流の基盤となるものです。国防軍・自衛隊間で行われている協力の主な例としては、今週前半に行われた日豪共同訓練における、豪国防軍機と海上自衛隊による合同訓練が挙げられます。本演習は、先週の豪海軍艦艇バララット、サクセスの東京訪問に続いて行われました。

両大臣は昨年の2プラス2会合において、国防軍と自衛隊の協力のための能力強化を念頭に、ロジスティック協力における作業の加速を約束しました。日豪はまた、共有する機密情報保全のための適切な法的枠組みを策定するという、2プラス2会合で設定された目標を実行に移すべく、共同作業を現在行っています。国防軍と自衛隊間のこうした協力や相互運用性の拡大は、両国だけでなくアジア太平洋地域の安全を強化します。

両国による世界の安全へのコミットメントという見地から、今年の早い時期に日本がアデン湾での海賊対処のために2隻の護衛艦を派遣した点、及びアフガニスタンでの国際活動を支援するために、インド洋における海上補給活動を継続させた点をわが国は歓迎しました。オーストラリアもこうした地域への派遣を行っており、国防軍・自衛隊間におけるさらなる実際的な共同作業の可能性はより高まっています。

我々はまた、パキスタンがイスラム過激派の脅威に立ち向かうのをいかに支援すべきかに、より注視しています。わが国は日本と同様、パキスタンが国内の課題に取り組むのを支援する、パキスタンに関するフレンズ・グループの参加国です。本グループは偶然にも今週ニューヨークで再び会合を開いており、わが国の大臣も本会合に出席しました。

わが国のアジア太平洋地域における日本との協力は、日豪が共に米国の同盟国であるという事実に強化されています。米国との同盟関係は、わが国の外交・安全保障政策の根幹です。これは政権の種類に関係なく、日本にとって米国との同盟関係が外交政策の礎であり続けているのと同様です。

米国が引き続きアジア太平洋地域内でプレゼンスを維持し、地域に関与する重要性を、日豪は共に理解しています。日豪による米国との同盟関係は、両国の安全を強化し、アジア太平洋地域に全般的な安定をもたらすものです。

アジアは2020年迄に、世界のGDPのおよそ45パーセント、世界貿易の3分の1、世界のエネルギー消費増加分の半分以上を占めることになります。またこの段階では、世界の80億近い人口のうち、56パーセントがアジアに暮らしているでしょう。中国やインドだけでなく、ベトナムやインドネシアといった新たな主要国の台頭が、地域の力学を大きく変えると思われます。

こう考えますと、安定し開かれた地域の安全保障環境を作り上げるべく、米国の地域への積極的、友好的な関与を維持する上で、日豪パートナーシップは主要な役割を果たすでしょう。 本パートナーシップはまた、効果的、包括的で機能性が高く、透明な地域機関作りに関与し、その実現を導くことでしょう。

日豪協力の強化は、両国それぞれの米国との関係、また日米豪間の安全保障・防衛協力を深めます。この3カ国間の協力を進展させる主要な枠組みが、日米豪戦略対話(TSD)です。偶然にも日豪の外務大臣、及び米国のヒラリー・クリントン国務長官は月曜日、閣僚レベルの本会合を開き、3カ国会合プロセスへのコミットメントを再確認すると共に、とりわけアジア太平洋地域における将来の課題に対応できるよう、3カ国間協力を進めていく方法について話し合いました。

終わりに

日豪関係は、きわめて重要でかつ緊密な関係です。そこには貿易と安全保障協力におけるパートナーシップという強固な支柱があり、その上に見事な協力の歴史が築かれてきました。

しかしより重要なのは、日豪関係には、両国が協力して地域の将来を形作ると共に、当地域また世界が直面する課題に共に対処していく上での未来と十分な可能性が存在している点です。

こうした協力の可能性が、両国民間における深い敬意と理解によって、最終的に支えられている点を忘れてはなりません。こうした信頼は、両国間の人的交流や文化・教育交流といった豊かな伝統により培われてきたのであり、アメリカ太平洋地域研究センターによる客員教授プログラムは、この点できわめて重要な役割を果たされています。日豪間における友情と共同作業を持続させる上で、ご貢献頂いている点に改めて感謝申し上げます。

(原文は英語)