スピーチ・ステートメント・メディアインタビュー
ケビン・ラッド首相 APEC2009 CEOサミットにおける演説
2009年11月14日
スピーチ DFAT_20091114
ご紹介いただきありがとうございます。ここシンガポールをまた訪れることができ大変嬉しく思います。また、この活気溢れる素晴らしい土地で、経済界の代表としてこの会合に参加されたことをお喜び申し上げます。
この一年は世界中で非常に厳しい経済の年でした。皆様は、世界金融危機が後に経済危機となり、さらに多くの国では雇用危機へと発展したこの事態に取り組まれたことでしょう。また、世界金融危機により世界経済に対する信頼度も大きく揺らぎました。しかし、これは皆様が世界の、また世界経済の56%を占めるアジア地域のリーダーとして強い解決姿勢を示した結果、政府と民間が協力を通じて過去12ヶ月にある一定の成果を成し遂げました。
成果をあげた国際機関の一つの枠組みがG20です。メキシコや他の地域の参加国もありますが、G20のうち、9つの国や地域がAPEC加盟国で、景気回復の原動力となるG20の役割の重要性を裏付けています。
実際に、2009年の世界経済全体の成長率が1951年振りにマイナス成長となり、世界景気の後退は世界の経済運営や地域間の連携の在り方に大きな課題を投げかけています。こういうときこそ、政府が果たす役割があります。
2つ目に、地域の枠組みが適切であるかという問いに答えるために、今、何がうまく機能しているのかを考え、そして、将来的にどのようにしたら地域の枠組みが更に良い役割を果たすかを考えたいと思います。まず、この設立20周年を迎えたAPECというすばらしい枠組みを例に挙げたいと思います。1989年に、オーストラリアのホーク首相はAPEC設立を提唱した一人でした。当時、地域の保護主義を引き下げるためにどんなことができるのかと人々が懐疑的な視線で見ていました。
しかし、この試みが成功であったことは現在の数字によって裏付けられています。当時、一般的な保護レベルは地域全体で約20%でしたが、20年の時を経て5%近くへと引き下げられました。6.2兆米ドルの貿易取引が行われているこの地域において、これほど大幅な保護主義の引き下げが行われたことは、国境を越える経済活動にとって、非常に大きな成果だと言えます。経済自由化の動きはひとりでに起こるものではありません。政府がお互いに力を合わせ、これは民間が最もビジネスをしやすいようにその環境を整えて行ったからです。
このようにAPECの成績を見ると、APECは特にすばらしい成功例として評価されます。
二つ目に、1990年代にAPECがサミットレベルの運営へと変貌したとき、各国の首脳が平時に地域を越えて集まり、アジア太平洋地域が直面するあらゆる課題について議論をする新たな機会を提供するようになりました。安全保証やより幅広い意味での世界協調、例えば最近では気候変動等が含まれます。
米国、中国、日本、また地域の他の国、メキシコ、オーストラリア、東南アジアといった国々の首脳が、毎年一同に会し、個別の貿易自由化の議論だけでなく、地域内での共通の課題について議論を持つことは、我々がAPECから得ている付加価値として見過ごすことができないものです。これはAPECが成し遂げた2番目の大きな成果と言えるでしょう。しかし、まだ我々が答えを見つけなければならないのは、このような地域間の協力体制を持った枠組みをどのように捉え、今後どのように発展させるかという問題です。そしてその答えが、オーストラリアが提唱する2020年までにアジア太平洋共同体(Asia-Pacific Community)を設立するという案です。
この提唱について簡潔ご説明いたしたいと思います。現在われわれの周りにはいろいろな枠組みが並立しており、それぞれが重要な役割を果たしています。今述べたAPECもその一つです。また、東アジアサミットはダイナミクな成長を遂げている東南アジアやASEANに加え、中国、韓国、日本の北東アジア3大国が加わっている枠組みです。また新しくインド、オーストラリア、ニュージーランドも参加しています。これは重要な集まりで、非常に勢いがあります。また最も早くからアジア地域の枠組みとして存在するASEAN自体も成功例として挙げられます。
何故そもそもこのような枠組みが重要なのかということに立ち返ってみると、1967年にASEANが創設されたときのことを考えてみて下さい。歴史的に交戦状態にあったインドシナ共産党と非共産圏の東南アジアが40年後に共存する共同体ができるとは夢にも思いませんでした。実際に40年間で達成したことは、東南アジア諸国全域における共通の認識、地域的共同体・緩やかな安全保障と強力な経済協力体制を実現したということです。これは卓越した成功例です。地域全体として我々は、このASEANの成功体験をどのように考え、今後のアジア太平洋地域全体の将来の課題にどう生かしていくべきでしょうか。
未だに根深く残る領土問題に対処していく必要がある中で、地域内の基本的な戦略面において再び亀裂が入らないようにするにはどうしたらよいでしょうか。朝鮮半島や、台湾海峡、南シナ海等にもまだ領土問題が残っています。この地域が何十年にもわたって享受してきた成長の軌道を維持し、将来的な対立を避けるにはどうしたらよいでしょうか。また、今日我々が代表しているこの大きな経済を徐々に単一市場に向かって行くための協力を更に促進するにはどうしたらよいでしょうか。
我々のアジア太平洋共同体という提案は一つの枠組みに中に地域内の一部ではなく、地域内の全ての国や地域を徐々にまとめていくことを目指しています。
政治的協力、安全保障協力、経済協力、また気候変動等の他の多くの分野における協力が有りますが、現在APECでは、政治、安全保障における取組は明確に行っていません。つまりこれは各国の経済国を集めた組織です。東アジアサミットにも強みがありますが、これは我々と親密な東南アジア諸国やそのパートナーである米国を今のところ除外しております。また、ASEAN諸国は当然東南アジアに専念しています。したがって、我々の将来のビジョンは、これらの国や地域をすべて加えた枠組みをどのように創造するかということであり、さらに重要なことは政治、安全保障、経済などを含めた取り組みによって、協力体制、安全保障の面での協力体制、地域内で共通意識を持つ体制を促進することだと思います。
まとめますと、平和や安全保障は、決定論的な手段によってもたらされるものであり、これは避けられないこと我々は考えがちでが、必ずしもそうではありません。既存の枠組みの下で、過去数十年に亘り地域における平和と協力を必死に求めてきました。これは過去の歴史が幸せなものではなかったためです。
したがって我々は枠組み作りを通じて、将来に協力が定着し、当たり前のようになることを促進しなければなりません。ヨーロッパの例を見てみましょう。ヨーロッパでは17、18、19世紀に亘って悲惨な戦争が続き、さらに20世紀には2つの世界大戦という激動の時代を経てきました。そしてついに、お互いが対立するのではなく、協力体制を作り出さねばならないと考えるに至ったのです。これがEU、欧州連合です。
私はEU型をアジア太平洋地域について提唱しているわけではありません。しかし、EUの例から学ぶことはあり、また身近で大きな成功例であるASEANからも学ぶことができます。
ですから、我々の地域も同じ方向に動き始めようではありませんか。オーストラリア政府は、これが長い時間がかかっても、焦らず、じっくりと取り組みたいと考えており、我々は2020年に目標を設定しています。来月は、シドニーでアジア太平洋共同体に関する我々のコンセプトについて産・官・学による 会議(One and a Half Track Conference)が開かれる予定です。地域内の各国・政府からは非常にハイレベルの代表団が参加することになっており大変嬉しく思います。地域全体からの多くの違った意見をお聞きし、じっくりと着実に進めて行きたいと思っております。
最後に申し上げたいとことは、我々はより広い地域での協力体制の枠組みを創造しながら未来を形成し行く方が、単に受身で未来に我々の形成をゆだねるよりも遥かに良いことだと思うのです。
御清聴ありがとうございました。