オーストラリア大使館東京

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スピーチ・ステートメント・メディアインタビュー

サイモン・クリーン貿易大臣 外国特派員協会におけるスピーチ
「世界経済の回復の中心をなす貿易」

2010年2月16日 (シドニー)
スピーチ DFAT_20100216

ウルスさん、ご紹介いただきどうも有難うございます。本日は外国特派員協会とお話しする機会を頂き、大変感謝しております。

昨年キャンベラにおいてエイプリル・プレスラー氏が開催されましたこちらの協会との前回の会議では大変心温まる思い出があります。今でも思い出しますが、皆さんが私のために盛り上がってハッピーバースデイの歌を歌って下さいました。 その後、世界の貿易問題について容赦ない質問がありましたが。

しかし、本当に、ここシドニーにおいて世界中の外国特派員の皆様に向けてお話しできることは喜ばしいことです。

私は本来の職務として多くの時間を海外のジャーナリストとお話をすることに費やしておりますので、今日はここオーストラリアに国際的なメディアが多くお集まり頂き、大変嬉しく思います。

2010年は重要な一年

2010年は、貿易に関しては非常に重要な一年となるでしょう。そしてこの一年間、私の職務においてどのような懸案事項があるのかを説明したいと思います。

まず、昨年のG20において各国首相より、2010年中にドーハラウンドを最終的に締結するように貿易相に対して指示が出ておりまして、これに間に合うように推し進めたいと思います。

次に、今年は、過去75年間で最悪の不景気から世界経済が回復しつつあります。貿易は引き続き景気を押し上げる刺激となっています。

貿易は景気を刺激するものですが、貿易のよいところは財政収支に影響がないことです。

景気見通しの変化や貿易に対する新たな視点は、2週間半前に私がオーストラリア政府を代表して参加したスイスのダボスでの世界経済フォーラムで実感することができました。

ダボスでのムードは、2009年と比べると今年はがらっと変わっていました。

昨年は、世界金融危機をいかに乗り越えるかに話題が集中し、ダボス全体を絶望と悲観が覆っておりました。

しかし、今年ダボスは未来を見据え、持続可能な成長、特に雇用問題が主な話題でした。

また、今年の世界経済フォーラムにおけるもう一つの大きな違いは、オーストラリアに対する非常に高い関心でした。

大恐慌以来、最悪の世界的景気後退であった2009年に、なぜオーストラリアだけが世界の先進国、33カ国の中で唯一、プラス成長を達成できたのか、と私は人々に何度も尋ねられました。彼らはいかにしてオーストラリアが不景気をかわしたのかを知りたがっていたのです。

オーストラリアの回復は中国の成長が続いていることに寄るものだと、BBCのような国際的なメディアネットワークは当然のように想定していました。

しかしながら私は、オーストラリア経済も打撃は受けたものの、その力強さは主に3つの要因につきると説明しました。

まず一つ目は、政府が断固とした景気刺激策を早急に講じたことです。

二つ目は、オーストラリア経済の力強さは、前労働党のボブ・ホーク、ポール・キーティング政権下で80年代から90年代にかけて一連の多岐にわたる必要な構造改革を行ってきた結果であると言えます。

例えば、豪ドルは1983年に変動相場制へと移行したことにより、リーマンショック後には為替レートが1豪ドル=63米セントまで下落することによって、商品価格の大幅な下落の影響を緩和することができました。

三つ目は、オーストラリアが他のどの先進国よりも世界金融危機を乗り越えられた理由は、我々が、従来の貿易関係を最大に生かしながら、同時に世界で最も成長が早いアジア地域に進出したからです。

オーストラリアは、エネルギーと原材料の主要な供給国として、アジア地域の成長から恩恵を受けてきました。2009年、世界全体の貿易数量は10パーセント以上減少しましたが、オーストラリアの輸出量は増加し、2008年比で財・サービスの輸出増加をみたのは、OECDで唯一オーストラリアだけでした。

もちろん、中国は貿易において重要な役割を果たしていますが、中国だけというわけではありません。

われわれのASEAN諸国との双方向貿易は、中国との貿易と並ぶものです。

インド向けの財輸出は昨年7%増加しました。また、日本や韓国との貿易関係も引き続き堅調です。

ドーハラウンドの展望

世界経済フォーラムの結びに、各国貿易相たちの年次非公式会議がありました。

議題の中心はドーハラウンドであり、WTO(世界貿易機構)の事務局長であるパスカル・ラミー氏が会議を実り多きものとするために尽力されました。

先週、私はキャンベラでラミー氏とまたお会いする機会があり、WTO交渉に関する議論の続きを致しました。

ラミー氏と私は、国会議事堂において共同プレス会見を行い、「WTOラミー氏、2010年までのドーハ締結はまだ可能と述べる」という見出しのニュースがロイター通信から発信されました。

具体的に申し上げますと、ラミー氏は、実務的にWTO交渉の8割が達成されているので、年内の最終合意は可能であると述べました。

ラミー氏が強調した問題は政治的な意志だということです。すべての国がWTO交渉を締結しようという政治的意思を持つことが必要であり、そのための日程表はすでに整っているということです。6月にカナダのトロントで開かれるG20首相会談に先立って、3月には進捗の実績調査があり、貿易相が出席する主要な会議だけで3回予定されています。

ドーハラウンド締結による景気のメリットは特に現在のような経済状況においては計り知れないものがあります。

米国のピーターソン研究所はレポートの中で、ドーハラウンド締結の結果、世界のGDPは年間で3000~7000億米ドル押し上げられると推計しています。

まずドーハは、先進国の関税の引き下げや輸出市場、特に農業市場の開放によって、世界の貧困国の発展を大きく後押しします。

また、オーストラリアの就労者やビジネスにとっても非常に大きな潜在的利益となります。

オーストラリアの農家にとっては、ドーハによってEU、日本、米国など主な補助金給付国において7~8割の補助金が削減されることを意味します。

オーストラリアの工業品生産者やサービス提供者も実際のビジネス機会を得ることになります。

そして保護主義という危険から我々を守る保険にもなります。

2008年7月には、ドーハ締結まで非常に近いところまで漕ぎつけましたが、交渉は停止してしまいました。

以後、過去2年間のWTO交渉は非常に困難であり、時にはストレスのたまるものでしたが、我々は立ち止まることも、議論が白紙に戻ることもありませんでした。

ドーハを補完するもの

オーストラリア政府は、ドーハに向けて全面的に取り組んでおり、私にとってもオーストラリア貿易相としての職務上の重要事項です。

ドーハのような多国間協定は貿易協定の中でも最も重要な協定です。「ラウンド」を締結するに勝る世界的な利益はありません。1994年のウルグアイラウンド締結で既に見たとおりです。

歴史を振り返れば、1950年代より、貿易は世界の総生産を3倍上回るペースで増加し、貿易自由化ためのラウンドそれぞれごとにその倍率は高くなってきました。

しかし、オーストラリア政府はドーハに全てを託しているわけではありません。われわれは、多方面との貿易関係を発展させており、それがあるべき姿なのです。

貿易には、多国間、地域間、二国間FTA(自由貿易協定)という補完的な関係があり、私はそれをカスケード効果と呼んでいます。

結果を一覧表にして見ますと、オーストラリアはすでに6カ国とのFTA合意に達しており、7カ国と交渉中、2カ国と検討中という状況です。

重要なことは、FTAの質とFTA条項が実際に実施されることです。最終的な目標は、貿易自由化と経済統合でなければなりません。

2国間FTAは、特恵貿易措置、つまり、ある特定の国やいくつかの国々を他国と区別して優遇し、経済統合を抑制してしまう特恵措置に陥る危険性を孕んでいます。これがオーストラリア政府の貿易政策の行く末であってはなりません。

FTAのメリットの例としては、米国とオーストラリアの自由貿易協定が挙げられます。昨年、米国が「バイ・アメリカ条項」を導入した際にも、豪米FTAによってオーストラリアの地位は確保され、オーストラリア経済に対して米国製品の利用を義務化しようとるすことから来る影響を緩和することができました。

ニュージーランドとのCER(経済関係緊密化協定)はFTAにおける理想形であり、動的モデルと言えます。

またASEAN・オーストラリア・ニュージーランドFTAももう一つの素晴らしい例です。

今年の1月1日に発効したASEAN・オーストラリア  FTAは、12カ国と約6億の人口、合計3.1兆ドルのGDPの地域をカバーするオーストラリア最大のFTAです。

これは、 ASEANがこれまでに取り組んだFTAの中で最も包括的なものであり、国内における貿易に影響する知的所有権や電子商取引等の一連の問題にも踏み込んだ内容となっています。

更に、ASEANとのFTAにおける重要な側面は貿易支援です。現地における技術訓練などキャパシティ ビルディング(能力開発)を重視することが、ASEAN協定の主眼となっています。

このようなメリットが得られなければ、市場を開放する意味はほとんどありません。

発展途上国がうまく機会を捉えるために、我々は能力開発不足を補わなくてはなりません。先進国は彼らを援助する必要があります。

能力開発は我々の世界貿易政策にとって非常に重要なポイントです。

ASEAN・オーストラリア・ニュージーランドFTA もまた地域経済統合を促進させるために重要な役割を果たしており、これはケビン・ラッド豪首相がアジア太平洋共同体構想を提唱した幅広い議論に当てはまります。

貿易の交渉課題を進め、ラテンアメリカとの関係強化を促進する上でもう一つ重要な貿易協定は環太平洋パートナーシップ協定、いわゆるTPPが挙げられます。

オーストラリアは米国、ニュージーランド、シンガポール、チリ、ブルネイ、ペルー、ベトナムと共に、3月にメルボルンでこの大がかりなFTAの交渉を開始します。

TPPは、地域経済統合の重要な基礎となります。APEC の最終目標であるアジア太平洋を繋ぐ自由貿易圏に向けた基盤となりうるでしょう。

重要な輸出相手国との二国間FTA

地域間貿易協定の他に、政府は二国間FTAに向けた戦略的アプローチをとっています。現在FTAが締結されていない我々にとって大きな輸出先国については、交渉中、または検討中です。

FTA交渉が現在進行しているのは、中国、日本、韓国です。米国とのFTAは2005年に発効しており、インドとのFTAについては実現フィージビリティ・スタディがまもなく完了します。

一年以上の実務レベルでの交渉中断を経て、中国との第14回交渉ラウンドが後10日もしないでキャンベラにて始まります。

重要分野の市場アクセス交渉は非常に困難で、交渉は予想以上に時間を要しました。しかし両国ともハイレベルの政治的コミットメントは変わっていません。

我々は日本についても、包括的でハイレベルなFTAを締結するということに引き続き尽力しています。

2007年に始まった交渉は、着実に前進していますが、当然、農業分野における交渉は困難を極めています。

日本では昨年の民主党の新政権誕生は、日本にとって大きな変化が起こることを示唆しました。

また大韓民国とのFTA交渉が前進していることを非常に喜ばしく思います。

最後に、オーストラリアと、我々にとって4番目に大きな財の輸出市場であるインドとの間のFTAのフィージビリティ・スタディも近々最終的にまとめられます。

その他では、マレイシアや湾岸協力会議(GCC)との二国間FTAが交渉中であり、太平洋諸国とオーストラリア、ニュージーランドとのPACERプラスの交渉も昨年始まりました。インドネシアとのFTAについては、検討中となっています。

貿易関係を活性化

少し話を戻し、オーストラリアが何処とFTAを締結しているか、また交渉しているかということを改めて見てみると、2つの主要な繋がりが欠けているということができます。我々は、アフリカやヨーロッパとのFTAを締結しておらず、その中には我々の貿易相手国として上位10ヶ国に入る英国とドイツも含まれています。

約10億人の人口を抱えるアフリカ大陸は、ハワード政権下で10年にわたって顧みられることはありませんでした。ラッド労働党政権下ではこれを改め、アフリカとの関わりを優先事項としています。

その一つとして、10日程前に私はアフリカを訪問し、南アフリカのケープタウンで行われた鉱業に関する大きな会議に出席しました。オーストラリアの鉱業会社はすでにアフリカの35以上の国に、200億ドルを超える投資を行うことを示唆しています。

オーストラリアはアフリカ向け開発援助の目標額を2010年に昨年比4割増の1億6,300万ドルに引き上げました。これ以外にも、アフリカの生産能力増強にもっと目を向ける余地があると思います。オーストラリアの資源会社は能力開発の価値を理解しており、政府も一体となってこれに取り組むことができるでしょう。

私が鉱業インダバ会議で発言しましたように、オーストラリアはその土地の先住民と共に働くことや離れた土地で働くことの重要性を理解しています。オーストラリアはその土地を尊敬し、土地の復興についての重要性を理解しています。

これがオーストラリアブランドの一部であり、我々がアフリカに貢献するものです。

アフリカから、オーストラリアの貿易政策でもう一つ欠けているヨーロッパとの繋がりに話を移します。

まず初めに、EU(欧州連合)は進行中のドーハ交渉においてオーストラリアの重要なパートナーであることを挙げておかなければなりません。

二つ目に、ヨーロッパはオーストラリアにとって全般的に開放的な貿易、投資の地域であり、我々は引き続きこの関係を築き、強化していくことに努めたいと思います。

経済ブロックとしてのEUは、オーストラリアにとって最大の貿易、投資のパートナーであり、世界金融危機がもたらした世界的な景気悪化にもかかわらず、双方向貿易は増加しました。

ヨーロッパとのFTA(自由貿易協定)交渉は現在のところ、我々の取り組む課題とはなっていませんが、私が昨年ブリュッセルを訪問した際にはこのように申し上げました。我々はEUがこれまでの発展途上国としかFTA交渉を行わないという決定を覆し、カナダとの交渉については状況が整ったと示唆していることに関心を持っています。これがEUの方針の変化を示しているのか、我々は確認したいと思っています。

我々は今度もEUと他国のFTA交渉の状況を注目していきたいと思います。

またダボスでお会いしたEUの通商担当委員カレル・ドゥ・グヒュト氏とも緊密な協力を続けていくことを楽しみにしています。

結び

最後に、貿易に関してはオーストラリアが一つの枠組みに固執しているわけではないということを申し上げておきたいと思います。むしろその反対です。

確かに、G20の各国首相が指示しているように、ドーハを締結させることは特に2010年においては優先事項となります。しかし、オーストラリア政府はドーハによって動きが取れなくなったり、不意打ちに会ったりするわけではありません。

私が本日大まかに述べた貿易政策の方針は、ドーハを通じてWTOの多角間交渉を支持し、またFTAを通じて地域間、2国間交渉といった複数のプロセスを同時進行して自由貿易を推進するオーストラリアの能力を表しています。

これらのプロセスは補完的で、これら全ては貿易自由化とより大きな地域経済統合を目指すものです。

貿易は重要で、世界金融危機以降、貿易が世界経済の回復の中心となっています。

貿易が景気回復の中で重要な役割を果たす機会を生かさなければなりません。ドーハによって国際貿易の恩恵はもう手の届くところにあるのです。

御清聴ありがとうございました。皆様のご意見とご質問がありましたらぜひお聞かせください。