スピーチ・ステートメント・メディアインタビュー
ケビン・ラッド首相 スピーチ
「オーストラリア経済政策の2つの柱 長期的な生産性上昇の継続と経済的安定性の維持」
2010年3月29日 (メルボルン)
スピーチ DFAT_20100329
マイケル、どうも有難うございます。皆様、本日ここにお集まり頂き、またこのすばらしいビルに私をお迎えしていただき有難うございます。これほどすばらしい吊り鉄道橋(railway bridge garter)はオーストラリアの他のどの場所でも見たことはありません。ここで働いている皆さんにとって、古い建築物を新しい目的のために再設計されたまれなものと言えるのではないでしょうか。
我々は「ファースト・オーストラリアン」の大地を踏み、歴史上最も古くから続く文化の中で彼らの文化を賞賛しているわけですが、その人々への感謝の気持ちをまず述べたいと思います。
今日、オーストラリアの未来に向けた重要な課題について演説する機会を与えて下さったマイケルに感謝したいと思います。皆さんもご承知のとおり、このような課題は決して尽きることがありません。
勿論、このような課題一つ一つに対処するためには、個別要因に対する明確な戦略を持つことが必要不可欠です。
一つのところに立ち止まるという選択肢はオーストラリアにはありません。むしろ、立ち止まるということは最も確実に落後していくための選択肢なのです。政策というものは、実現させためには、ダイナミックで、積極的で、前向きでなければならないものです。
オーストラリア政府は、世界のほかの多くの地域が不況に陥っている一方で、力強い経済を作り、勤労家庭の雇用を守り、オーストラリアを不況から抜け出すことに注力しています。つまりこれは、勤労家庭、高齢者、次の世代のオーストラリア国民のために国家を変えるということです。
政権に就いてから最初の2年間で、我々はこの仕事に取り掛かりました。
まず初めに
- 労使関係法「ワーク・チョイス」(Work Choices)の廃止を通して、職場により公平なバランスの取れた法律を適用
- 教育革命を通じて、学校への投資を増やし、教育現場の状況を改善
- メディケア以来の最大の医療改革によって、健康・医療サービスを改善
またこれに加え、政府は国民全てによりよい未来を与えることにも注力しています。
例えば、
- 技能、インフラ、規制改革など生産性向上の鍵となる分野に投資することによって、長期的で持続可能な成長
- 都市部や地方主要都市部の人口増加という課題に対応するため、適切な都市計画や投資
- 気候変動や水問題といった世代を超えた大きな課題への取り組み
これら全ての核となるのは、未来へ向けた力強い経済を作り上げるということです。
政権についてからの最初の2年間は、2007年のインフレブームに始まり、2008年、09年の劇的な世界的バブル崩壊、そして大恐慌以来の最悪の世界不況を経て新しい成長時代の夜明けという世界経済にとってまさに激動の時期でありました。
このような劇的な環境変化の間も、政府は経済運営を一貫した理念で進めてきました。それは安定した経済を維持するための景気循環型マクロ政策と、ミクロ経済改革の包括的な取り組みの遂行という2点です。
つまり、政府の経済政策とは、長期的な経済改革を推し進める一方で、短期的な景気変動を管理するということです。これが、我々の政権下での最初の2年、そして今後も推進する政府経済政策の2つの柱です。
本日の私のスピーチでは、3つの点を申し上げたいと思います。
- まず、過去2年の世界経済のバブルとその崩壊を通じた我々の経済政策
- 二つ目は、世界不況とそれに対する政府の対応による成長回復に関連しどのような課題が新たに出てきているかを明確化
- 三つ目に、より生産的、より持続可能、より生活しやすい街づくり等、長期的で持続可能な成長のための基盤作りのプランを作成
この政権が始まったときに、オーストラリア経済は、力強い世界景気を背景に歴史的な鉱業ブームの真っただ中にありました。
例えば、
- 名目GDP伸び率は8%で推移
- 記録的な商品価格によって、2000年代半ばとの比較でオーストラリアの交易条件は2割以上上昇、この急激な増加は第二次世界大戦以降の羊毛ブーム時以来の伸び
- BHPビリトンとリオティントは、鉄鉱石価格で85%増加を記録 、原料炭で200%の上昇し、このような鉱業メジャーに過去最高の企業収益をもたらす
- 歴史的な価格上昇によりオーストラリアのGDPに占める鉱業の割合は、西オーストラリアがゴールドラッシュに沸き、ブロークンヒルが最初に開発された19世紀末以来見られなかった水準に上昇
しかし、15年間連続のプラス成長の後、オーストラリアは自らの繁栄という罠に危うく足をとられるところでした。経済は、幅広いインフラ整備や労働技術の不足を含めて生産能力の制約に苦しんでいました。
- まず、商品の大量輸送船の入港待ちの行列、主要都市の交通渋滞、世界で最も遅くて高額なブロードバンド、などインフラ面でのボトルネック
- 二つ目に、過去30年間で最も労働市場が逼迫し、従業員は慢性的な労働力と労働技術の不足
そして景気過熱と限られた経済的能力というこの両方が重なり、オーストラリアのマクロ経済の安定性を脅かしていました。
- 2008年9月の5%をピークとして、インフレは16年振りの高水準
- インフレターゲットが正式に導入された1996年以来最高のインフレ率を記録
- オーストラリア準備銀行(豪中銀)は、12ヵ月連続で金利を引き上げ、先進国の中で2番目に高い金利となる等、強い金融政策引き締めで対応
2008年に、私がオーストラリア首相として初めてパースで行った経済政策に関するスピーチにおいて、これら諸問題、経済的課題に対して、責任ある保守的経済運営の原則に沿って対処することを約束しました。そのスピーチの中で、私は「規制改革を通じ、需要圧力やコストを押し下げ、更にオーストラリアの供給サイドの能力を向上させることによってインフレ圧力を緩和させる。そのためにあらゆる方面で経済政策の手を尽くす」と約束しました。そしてこれがまさに政府が行おうとしていたことでした。
その後何カ月間、政府の経費削減委員会が間断なく働き、今後4年間の当初予算から330億豪ドルを削減しました。これは、前政権が全期間を通じて行った削減額を越える金額です。
過去10年近くの間で、政府支出の実質の伸びが最も低く抑えられた結果、2008-09年の財政収支は対GDP比で見ると過去10年近くで最大の220億ドルの黒字と予想されています。
勿論、2008年の第4四半期には、世界の経済情勢は急速に、また劇的に変化しました。我々が政権についた9ヵ月後にあたる9月15日には、リーマンブラザーズが破綻し、世界経済は窮地に追いこまれました。
リーマン破綻の何カ月後には、世界の株式市場はピーク時と比較して最大50%以上も下落しました。これは大恐慌時の下落幅を上回ります。信用市場は前例のない程混乱し、世界の銀行業界全体では3兆ドルの損失を計上、120行以上が破綻や救済の対象となりました。
金融危機は急速に実体経済へと広がりました。
- 主な先進国経済は、ドミノ倒しのように不況へと突入
- 世界貿易は、大恐慌以来最悪の40%以上減少
- フォード、GM、シティバンクなどの巨大企業が破綻の瀬戸際に立った
当時、多くのコメンテーターは1930年代の再来かという恐怖に慄くコメントをしていました。
オーストラリア政府は、このような世界的な出来事と無関係ではいられないということが分かっていました。問題は、世界経済を襲った嵐がオーストラリアを直撃するかどうかではなく、我々はどの程度被害を受けるか、また被害を抑えるためには何ができるかということでした。
10月初旬までには、小売販売、消費者・企業信頼感、株式市場といった主だった先行指標が示すようにオーストラリア経済は下降し始めました。
しかし、これは単なる統計上の話ではありません。景気後退が、オーストラリアの勤労家庭や勤勉な中小企業の生活と意欲に及ぼす実際の影響を回避しなければならないということです。
2008年末に、私はクイーンズランド地方のある店主から手紙を受け取りました。そこにはこう書かれていました。「私はどうしたらいいのか途方に暮れているので、首相宛てに手紙を書くことにしました。私が店を開いているショッピングセンターに買い物に来る人々は皆困っています。うちの売り上げも過去3ヶ月で65%落ち込みました。すでに7人のスタッフのうち、3人を解雇しました。私自身も、倒産して事業をなくすのではないかと脅えています。私の両親の家族の家も、この事業資金の借り入れの抵当に入っているので、家を失うのではないかと心配です。」
世界不況がオーストラリアを直撃すると、このような手紙がポツポツと、やがて洪水のように私のところに来るようになりました。
オーストラリアや世界全体で経済情勢が変化するにつれて、政府は景気対策の財政出動という全く新しい課題に直面しました。
経済的保守というのは、我々の責任の及ばない圧力によってオーストラリア経済が破壊に追い込まされているときに、黙って指をくわえて眺めているということではありません。経済的保守とは、民間部門の活動が困難になっているときに政府が果たす直接的役割を迅速に拡充していくということです。
現在のオーストラリア政府は、野党側の抗議にもかかわらず、金融市場の信頼を維持し、実体経済を支援するために大胆に介入しました。
具体的には、
- 2008年10月の時点で、オーストラリア史上初めて、政府は迅速に1600万人の預金保有者全てに対する預金保証により金融の混乱を防止
- 2つ目に、オーストラリア史上初めて、ビジネスへの貸付の流れを途切れないようにさせるため、政府は必要に応じて外国からの資金を調達できるよう銀行にアクセスを与え、銀行の事業向け融資に保証措置
- 3つ目に、当面の経済が破綻しないよういに、我々は270億豪ドルの景気刺激策を実施。具体的には、2008年12月と2009年2月に、現金支給、初回の住宅購入者向け助成金を3倍に拡充、民間投資のための事業税優遇措置などの一連の短期、中期、長期の刺激策を、実体経済に影響を与えるために実施
我々が景気刺激策を行うにあたり、我々は経済を迅速にサポートする緊急性のあることと、持続可能な経済成長という将来的なニーズにそれぞれ目を配ってきました。
- 景気回復戦略のための国家建設として行われた直接投資総額のうち65パーセントが中長期的なインフラへの投資
- 中期的な戦略では、政府は、過去最大規模の学校の近代化、公共住居の建設や地方インフラのための土木工事への記録的な投資等、約5万件の建設案件からなる投資プロジェクトを開始
- 長期的な戦略では、主要鉄道、道路、港湾、教育、クリーンエネルギーのインフラ、全国的な高速ブロードバンド普及等、政府が大型のインフラ投資を行うことを約束
IMFは、「長期的にインフラ不足に取り組みながら、短期的に公共投資を増加させることで経済活動を援助できる」と結論付けています。
政府は、我々が今直面しているこの重要性と複雑性、また危機を乗り切るために我々が行おうとしている経済戦略の重大さと複雑性について、オーストラリア国民に対し誠実に向き合い、経済危機の当初から、この先の道のりは平坦ではないであろうということを認めました。
12ヵ月が過ぎた今、私はオーストラリアが世界不況の中を切り抜けることに成功したということを非常に喜ばしく思っています。これはオーストラリア国民の立ち直る力と、経済界、労働組合、労働者、政府等、あらゆるコミュニティー全体の一つに纏まった力の証や、政府の経済政策の明確な方向性が当初から正しかったことの証です。
私は、政府の経済刺激策が成功したことを非常に喜ばしく思っています。
また、財務省の推計によると20万以上の雇用が景気対策によって創出されたことを喜ばしく思っています。
海外では非常に多くのビジネスが閉鎖的であるのに対し、多くのオーストラリアのビジネスが開かれていることを喜ばしく思います。
全ての先進国経済の中で、オーストラリアの景気の落ち込みがもっとも軽かったことを喜ばしく思います。
また実際、オーストラリアが全ての先進国の中で唯一、不況に陥るのを免れた国であるという事実を喜ばしく思います。
オーストラリアが、先進国の中で最も少ない債務残高と財政赤字のまま世界不況から立ち直り、信用格付けでAAAを維持していることを喜ばしく思います。
オーストラリアは、先進国の中でもっとも力強い経済として不況から脱したのです。
我々はこれに自信を持つべきです。しかし慢心してはいけません。自信を持ちつつ、慢心しないということは、この先を見据え、これから先に起こりつつある課題に目を向けていくということです。
そして我々の栄冠に安住することなく、成功を糧とすることであり、将来に向けた持続可能な成長の新たな基礎を作り、我々の経済の向上を継続させることです。
我々は努力の結果、不況の中で世界がオーストラリア経済を羨望するようになりましたが、これからはこの立場をしっかりと固め、景気回復局面を経て経済成長へと回帰するようまた努力しなければなりません。
オーストラリアが、民間や公的な機関が予想したペースを超えて、急速に世界不況下から回復してきたことは間違いありません。
- 2009年5月予算の時点では、政府は2009-10年のGDPがマイナス0.5%成長となることを予想
- 年央経済財政展望では、これがプラス1.5%に上方修正され、更に2010年2月の金融政策に関するコメントの中で豪中銀は2009年-10年で2%の成長予想
我々が世界不況から回復する中で、私は、政府の経済政策が当初と変わらない経済戦略の原則を守り続けるということを、一貫して申し上げています。つまり、
- 1つ目は、景気マクロ経済の安定性を維持する景気循環型財政政策
- 2つ目は、今後も生産性上昇の鍵となる分野への投資によって、長期的経済成長のための基礎固め
今日現在の政策金利は、金融危機前に比べるとまだ3.25%ポイント低いですが、豪中銀は徐々に金利を危機の最悪期の歴史的低水準から徐々に引き上げる方向へと動き、すでに状況の変化に応じて政策の運営方針を調節し始めています。
同様に、我々の景気刺激策もタイムリーで、暫定的に照準を合わせたものとなっているため、政府財政運営による経済成長への効果はピーク時をすでに過ぎています。景気対策の効果のピークは2009年4-6月期で、そこからは徐々に低下しています。
重要なことは、2009年5月に、政府が発表した予算における財政規則を経済回復に焦点を合わせ、先手を打つ形の財政政策に調整しました。
- 政府の「支出規則」により、経済が成長軌道を上回ったら政府支出の実質ベースの伸びを2%以内に抑える、そしてこれは財政バランスが黒字になるまで適用
- 2つ目は、すでに実施されている政府の「相殺規則」により、新たな支出の分、ほかの支出額を削減
- 3つ目は、政府のGDP/租税比規則により、課税水準は2007-08年の水準よりも平均で低くなるように抑制
これらの財政規則は世界でも最も厳格で信頼度が高いものです。IMFは、昨年、「(オーストラリア)政府の財政黒字回復と中期的な予算収支の平均的黒字化へのコミットメントは賞賛に値する。他にこのような明確なコミットメントを定めている先進国はほとんどない」とコメントしています。
これらの財政規則は、民間部門が回復すれば政府の支援は縮小するという、政府の財政保守主義を引き続き具体化したものです。
要約すると、政府の経済原則の核となる保守的景気循環型政策は急激に変化する景気循環という試練に立ち向かっています。バブルの発生と崩壊、回復という過程を経て、政府は変動する経済状況の中で一貫した原則を適用し続けています。
このように私は、まず第一に、景気循環のあらゆる局面にわたって安定的なマクロ経済環境を維持するための政府戦略に傾注してきました。しかしながら、政府は、直面する様々な短期的経済課題に対処しながら、オーストラリア経済の将来に向けた持続的成長のための改革という長期的に核となる経済戦略を堅持しました。
私が2007年に野党党首となった際、オーストラリア・ビジネス協議会(the Business Council of Australia)で初めて行ったスピーチで、私は「ダイナミックな競争社会において、立ち止まることは後退を意味する。だから私は改革を続けることを約束する」と述べました。
改革のプロセスは、生産性向上、労働力活用、経済全体を網羅した発展に軸足を置いたものでなければなりません。
まずは生産性についてお話します。
90年代末以来の生産性の長期的な低下は、オーストラリアの経済活動の中で大きな障害の一つでした。1994年から99年にかけて、オーストラリアの生産性の伸び率は、OECD諸国の中で2番目に高いものでしたが、この高い伸びの後に減速し、1999年から2007年にかけては、OECD諸国の中で14 番目へと大きく順位を落としました。
もし我々が、オーストラリアの生産性伸び率を引き上げるための行動を今起こさなければ、オーストラリアの平均的な生活水準が低下します。だからこそ、生産性の課題は政府の長期的経済戦略の中心であります。私が今年のオーストラリア・デイに先立ち、首都や各主要都市で生産性に焦点を当てたスピーチをしましたが、生産性の課題は主要な一つのテーマです。
生産性の向上なしに、我々の持続可能な長期的経済成長はなく、このような成長なくしては生活水準を向上させるための揺るぎない基盤を維持することができません。将来のために社会・経済インフラの投資も必要です。
インフラは、将来の生産性向上のための必須要件です。
国際通貨基金(IMF)によると、オーストラリアのような先進国において、公的なインフラ資本を1%増加すれば、生産は約0.2%増加するそうです。このような関連にもかかわらず、ここ数十年間のオーストラリアのインフラ投資施策は、下降トレンドをたどっています。2009年のOECDレポートでは、オーストラリアの運輸、保管、通信インフラ向け投資はGDP比で1980年代から1990年代に減少し、今世紀に入っても最初の10年間で更に減少しました。
もしこの傾向が継続すれば、オーストラリアは生産性の面で他の国々から遅れをとり、長期的成長や生活水準も後塵を拝することになるでしょう。
オーストラリアのインフラ投資不足は、我々の持っているインフラと、我々が必要としているインフラの間にギャップを生み出しました。このような状態が、港湾、貨物、鉄道、道路、ブロードバンド、都市の渋滞等に見て取れます。
過去2年間に、政府は、この全国的なインフラ状態を改善ために、断固たる行動をとってきました。我々は、インフラ投資における優先順位付けやプロジェクトの評価を行うために、国のリーダーシップを発揮するための「インフラ・オーストラリア」という機関を設立しました。
我々は、インフラ投資の障害を取り除くために、規制改革を行ってきました。また、現在、オーストラリア史上最大規模のインフラ建設計画に乗り出しました。
- 道路関連投資を2倍、鉄道関連投資を4倍、初の港湾投資、など360億豪ドルの運輸インフラ計画
- 「ナショナル・ブロードバンド・ネットワーク」向けの430億ドルの投資で、
これは超高速ブロードバンド、よりパワフルなビジネスへの移行、学校教室や病院施設の刷新等、21世紀型のインフラ促進
運輸や通信インフラへの投資は、景気低迷期には経済を支え、世界金融危機で生じた投資活動の落ち込みをカバーします。しかし長期的には、我々の将来の繁栄を作り上げることにつながっていくのです。
また、連邦政府はインフラ提供における州政府の役割の重要性を認識しています。
私は、オーストラリア政府の医療改革計画そのものが、州政府の財政収支を自由にし、州の重要なインフラ投資へと再び目を向ける上で大きな意味を持つ一歩になったと申し上げたいと思います。医療改革により、政府は連邦政府の財政改革にも取り組んでいるのです。
財務省は、もし何も対策が取られない場合、今後20~30年の間に保健・病院関連支出は、州・準州政府の全ての歳入に匹敵する額になるであろうと予測しています。全歳入を費やしてしまう額です。
また政府の改革により、州政府の医療支出は今後10年に亘って約150億豪ドル削減可能と予測されています。これによって、州は未来の都市や地方の支えるために必要な道路、公共交通、都市インフラなどに追加的に投資することができるようになります。
ここビクトリアでは、ビクトリア州政府の予算必要額が、今後10年間で38億豪ドル軽減されることになります。我々が医療改革に取り組まなければ無かったこの38億豪ドルをビクトリアのインフラ整備に使うことができます。これが、我々が国として根本的な医療改革に取り組まなければならない理由です。
本日、私はここビクトリアにおり、明日は再度ブランビー州首相に会い、今後の医療、病院システムについて更に建設的な議論をすることを楽しみにしています。今こそ改革の時なのです。
政府が抱える生産性のもうひとつの課題は職業能力に関するものです。政府は、従来からあった業種に加え、未来の産業における職業を創出し、子供達のために世界最高水準の教育制度、労働技術、訓練を整備・供給します。我々は、将来における高度技術や高賃金の職業において、世界の他の地域と競争していける技術やツールをオーストラリアの子供達に与えたいのです。
このために今、我々は次のようなことに取り組んでいます。
- 3つのR、つまり読み書き算数に重点をおいた統一的な国立学校カリキュラムの作成
- 一部ではなく全ての学校の質を高めていくため、生徒の父兄に学校における子供や学校の成果に関する情報を提供
- 最高水準の職業訓練センターを設置して、子供たちが職業を学び、将来の労働技術の不足に対処できるように2500校の中等教育機関全てに訓練サービスを提供
- デジタル教育革命を学校に起こし、わが国の9歳から12歳の生徒全てにとって、2011年末までに学校でコンピューターの使用可能
- 完全デジタルネットワーク化された最高水準の21世紀型図書館、科学センター、語学センター、その他教室改革を含めた、オーストラリア史上最大規模の学校近代化プログラムを実施
- 全国に75万か所の職業訓練施設を増設
- 全国の大学に50,000人の学生を増やすための追加投資
これらは教育革命、労働技術革命、技術革新革命などは重要な構成要素で、 ゆくゆくは生産性革命と呼ばれるべき一部となります。
高齢化社会の必然的な帰結の一つは労働力低下です。高齢化により、労働力は、現在の65%から2049-50年までには60%程度へと低下すると予想されています。これは、経済成長を減速させ、家計所得の伸びを鈍化させる可能性を孕むものです。
今後予想される労働力低下を言い換えると、次のようになります
- 1970年、オーストラリアでは65歳以上の人一人を支えるために税金を払う労働年齢者は7.5人
- 現在は5人
- 2050年は、65歳以上一人に対して、税金を払う労働年齢者は僅か2.7人
これは非常に劇的な変化です。このような高齢化社会が経済繁栄を阻害する影響を緩和させるために、我々は生産性向上によって実質所得水準を引き上げるよう支援し、オーストラリアの労働年齢者の労働市場参加を最大化できるよう促進しなければなりません。我々が政権について以来、政府はすでにこの点に関する主要な長期的施策を実行しました。
- オーストラリア史上初めての男女の有給育児休暇を導入、来年1月より実施
- 両親の仕事復帰を支援するため、育児手当還付を30%から50%に引き上げ
- 「Learning or Earning(勉強か仕事)」と呼ばれる「オーストラリアの若者協定」を導入。21歳以下の若年者で12年生(高校卒業)もしくはそれに相当する資格を持たない者は、教育か職業訓練のどちらかを受けている間でなければ若年者向け手当の受給資格がない
- オーストラリア国民が病気による休業や、労働市場への参加が難しくなることを防止するために、過去最大規模の予防医療への取り組み、慢性疾患の改善への取り組みを含めた国家的な医療改革
健康は、労働参加に大きな影響を与えます。慢性疾患を減らす努力によって、17万5千人が今後10年で労働に参加することができると思われます。
"アクセス・エコノミクス"の推計によると、慢性的な痛みがある疾患が原因で減少する労働日数は、オーストラリアにとって年間117億豪ドル分の損失にもなります。また社会全体の中で、軽中程度の精神疾患が原因での生産性の低下は、年間160億豪ドルに昇るとも推計されています。
長期的な医療改革を後押しするもう一つの理由は労働参加を改善することなのです。もっと率直に申しますと、もし我々が包括的な医療改革に取り組まなければ、オーストラリアの労働年齢層の労働市場への参加が大幅に減少し、長期的な生産性、生活水準、ひいては経済成長全体の足を引っ張るということになるのです。
医療改革は、単なる社会政策上で必須事項だけでなく、等しく経済政策上の必須事項でもあるのです。
もし我々が、生産性を加速させ、更に労働参加を後押しし、人口増加の課題を克服したいのであれば、よりより都市計画、街づくりも必要になってきます。
オーストラリアの主要都市は、国のGDPの約80%を生み出しています。また国の労働力の75%の雇用を抱えています。
より力強く、持続可能で、住み易いオーストラリアの街になるということはオーストラリア経済が更に成長することや、人々のライフスタイルがよくなるということを意味しています。これは、現政権にとって重要な長期的優先課題の一つであり、インフラ、運輸、水、住宅、環境など多岐にわたる分野に跨っていて、政府でも横断的にあらゆるレベルにおよんでいます。
これまでの政権とは異なり、我々は連邦政府が将来の都市政策において果たす役割は大きいと信じています。政権についた我々のまず第一歩は、過去10年間、政策上放置されてきた都市政策と向き合うことでした。
- まず、我々は迅速に「インフラ・オーストラリア」を設立し、同時に「大都市連合」(Major Cities Unit)を設立
- 運輸、通信、住宅、保健、教育、地域インフラの分野において各都市向けの主要投資プログラムを開始
- 連邦政府の歴史上初めて、連邦政府による都市インフラへの更なる投資のための条件として、国の条件を満たす都市の戦略的都市計画を作成に関する、州・地方政府と連邦政府が合意という大きな一歩を達成
そして今月、政府は初めてオーストラリア都市レポート(State of Australia Cities report)を作成しました。このレポートは、オーストラリアの都市を海外の主要都市との比較で評価し、経済、環境、社会などあらゆる指標によって事実を記述し、説明するものです。
年内に公表される予定のこのレポートは、オーストラリアの国としての都市計画を、生産性、持続可能性、住みやすさ、の3つのテーマを中心に説明します。
- 生産性の高い都市にするため、技術革新や高収入の仕事の基点を作りだすような世界水準の輸送・通信インフラを計画的に建設
- 持続可能な都市にするため、エネルギー消費やCO2排出が少なく、公共交通が便が良く、よりクルマへの依存が低く、水資源を持続可能な方法で利用する街を建設
- 住みやすい都市にするため、入手しやすい住宅、学校、病院、医療サービスに繋がった地域社会や、コミュニティーという意識や、積極的なライフスタイルを推進する地方インフラの揃った街を建設
すでに、オーストラリア政府は都市計画の主要課題である生産性、住みやすさ、持続可能性に着手しています。
まず、我々は生産性の高い都市は、雇用を創出し、高い生活水準をサポートすることが重要だと認識しています。都市の生産性の重要条件は、インフラ、技術革新、都市計画です。
先程述べた通り、我々は史上最大の360億豪ドルを輸送インフラに投資します。このインフラによって、都市はより生産的になり、これまでにないほど、都市と地方間を密接にするのです。
ここビクトリア州では、すでに我々は次のようなことに投資しています。
- ウェスタン・リング・ロード(Western Ring Road)を主要な貨物道路にするために約10億豪ドルを投資
- メルボルン市では80年ぶりの新しい主要鉄道となる地方レイルリンク(Regional Rail Link)に30億豪ドル以上を投資。考えてみてください。メルボルンで80年ぶりの新しい主要鉄道路線です
- 連邦政府としては初めての都市鉄道への投資を決定
- 将来的な都市効率の基盤となる都市の水資源に連邦政府としての初めて投資
また、我々は都市の技術革新も支援しています。我々がインフラの果たす重要な役割を考える際には、メルボルンを始めとするオーストラリアの主要都市を変身させるような「ナショナル・ブロードバンド・ネットワーク」(NBN)にも着目しています。
- NBN社は、ブランスウィックで3000件の家庭とオフィスから始める試験的プログラムを皮切りにメルボルンにおける工事を開始すると発表
- FTTH(fibre-to-the-home)技術の導入は既にタスマニアで開始
- 約6000キロの新しい光ファイバー網の提供により、オーストラリアの中で現在、21世紀の高速情報通信の恩恵を享受できていない地域、ジェラルドトン、ダーウィン、エメラルド、ロングリーチ、ブロークンヒル、ビクターハーバー、サウスウエストギプスランドの優先6地域に加え、100以上の地方拠点と接続
先に申し上げたとおり、我々は都市の技術革新を支援しています。ここメルボルンでは、技術革新を支える大学のインフラに投資しました。具体的には以下のとおりです。
- ラトローブ大学 分子科学
- メルボルン大学 神経工学
- 国立シンクロトン(粒子加速装置)科学センター
- メルボルン脳神経科学プロジェクト
更に、政府は都市計画を改善する取り組みを行っています。先に述べましたように、昨年12月にオーストラリア政府は史上初めて各州・準州と戦略的都市計画のための国の要件について州・地域との合意に至りました。
- これによって2012年1月1日までに、州・準州は最も優れた戦略的都市計画を作成
- この目的が条件で、連邦政府から州政府への資金提供
- オーストラリア政府委員会 (Council of Australian Governments (COAG):総理、首長等から成る)は、COAG改革委員会が全ての自治体から指名を受けた有識者による小委員会の支持を得てこの改革を推進し、COAGに報告するということに合意
最後に、都市生活については、我々の投資はもっと住みやすくするために計画されています。
特に、政府は住宅が購入し易くなるように、住宅大臣を置くことから始めました。我々の政権以前には、このような担当は連邦政府レベルには誰もいませんでした。
前政権では明らかにこの問題を優先しませんでしたが、現政権では高い優先度と考えています。
また政府は次のような住宅政策にも取り組んでいます。
- 政府の全国賃貸住宅供給促進計画により、新しい手ごろな価格の賃貸住宅を全国に供給
- 5億豪ドル規模の住宅供給促進基金によって住宅供給の障壁をなくし、新しい住宅コストを下げる
- 初回住宅購入貯蓄口座に個人が最初の住宅を購入するための貯蓄を中長期的に促進
- 公共住宅19300戸の新規建設と既存の7万戸の修復のために、オーストラリア政府がこれまでに行った公共住宅投資の単一の事業規模として最大の56億豪ドルを投資
- 更に20万人以上のオーストラリア国民が、初回住宅購入促進制度の恩恵を受けた
住宅をより購入しやすくするということは、新規の住宅地開発と既存の住宅地の再開発の両方で住宅の在庫を増やすことです。
私は本日、500億豪ドルの住宅関連インフラへ投資という住宅供給を増加させる次の政策を、皆様に発表できることを非常に喜ばしく思います。これは、全国住宅供給促進基金の業務の一部です。
この投資により、投資がなかった場合に比べて、6~14か月早く、7000戸以上の住宅の供給が可能になります。
これにより、住宅購入者は平均して2万豪ドルのコスト削減を享受することができます。
これは、全国住宅供給促進基金の一部で、計画や認可の遅れや、水、下水道、運輸、空地等のインフラコストから生じるコストを削減することができます。
ここビクトリアでは、バララット地区建築計画の準備に投資をしています。これは、この地域の土地を迅速な手続きで供給し、必要性の高い建設を約330日前倒しすることを可能にするものです。
このような投資により、地域社会にインフラを建設し、住宅の供給制限を緩和し、住宅をより購入し易くします。また、都市郊外や地方の住宅造成地区の発展を支援します。オーストラリアの多くの地域で新しい家を購入したいと考えている家族にとっては朗報と思いますが、更にいろいろな手を打つ必要があります。
オーストラリアの国民の非常に多くは住宅市場から遠のいています。私たちは、勤労者世帯はより良い条件を与えられるべきであると考えています。我々の政府は、この状況を具体的に変えようと行動しており、より多くの家を建てて、勤労者世帯が購入できる住宅を増やせるようインフラに投資し、都市計画を見直しています。
全国住宅供給促進基金の目的は、インフラコストを根本的に変え、勤労者世帯が購入できる住宅を増やすことです。現在のインフラコストが非常に高いため、これが多くの住宅購入者は市場から遠のく結果となっております。これが将来に続いてはならないのです。
ですから、新規開発、都市再編、効率的社会・経済インフラ計画等住宅供給促進のあらゆる側面において、住宅を購入し易くすることは政府の将来に亘る州や準州との改革課題の重要な部分となるのです。
勤労者世帯にとって、長期に亘る住宅の購入し易さ、インフラ供給、都市計画刷新という点では、よりよい条件となるでしょう。我々は、全国住宅供給促進基金の業務について、今後いろいろと語らなければならないでしょう。
政府はまた、都市の持続性を支援しようとしています。我々は意欲的なCO2削減目標を達成しようと、気候変動に対する国を挙げた包括的な取り組みを始めています。
炭素汚染削減計画はオーストラリアの温室効果ガス排出を削減するための中心的な計画です。
- また、太陽光の主要プロジェクト、炭素回収・貯留技術試験プロジェクト、リニュアブル技術革新などのクリーンエネルギー施策に45億豪ドルを投資
- 新築の住宅には新たな6つ星の格付けを義務付け、家庭部門の効率を改善
- 環境建築基金(Green Building Fund)を通じて、商業ビルのエネルギー効率を改善
- 公共交通インフラを支援することによって、家族が出かける際の交通の選択肢を増やす
また同時に、これらの投資は、我々が求める将来に亘り持続可能なオーストラリアの都市建設のための重要な手付金なのです。
結びに、私は自らがオーストラリアの未来について引き続き楽観主義であるということを申し上げたいと思います。
この国は、筋の通った国であり、国民は変化を恐れない、勤勉でしっかりとした人々です。
昨年、世界の他の地域が不況で水面下に沈んだ時でも、我が国は切り抜けてきました。世界中で失業者の列がどんどん長くなっていた時にも、経済界、労働組合、オーストラリア政府は協力し合い、まさにオーストラリアの何十万もの失業を防ぎました。
正義のための戦いが行われるとき、我々はいつも戦いに駆けつけ、我々の国内外の友人が困っているときは、我々はいつも手を差し伸べています。
我々は、また、私は首相として、この国を率いていることを深く誇りに感じています。だからこそ私は、長期に亘り持続可能で、繁栄し、生産性の高い都市建設を進める一方で、力強い経済成長を促すように安定的な経済運営を断固として続けて行くつもりです。
ご清聴ありがとうございました。